違法を疑うレッドブル「証拠がある」RB18酷似のアストンマーチン、FIA合法判断にも関わらず
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F1スペインGPの開幕を前にスポットライトを浴びたのは、アップグレードが投入された新生アストンマーチン「AMR22」だった。その様は「グリーン・ブル」と呼ぶべき程にサイドポッドが「RB18」に酷似しており、レッドブルは「証拠がある」と、知的財産違反を疑っている。
アストンの前身、レーシングポイントはかつて、2020年にメルセデスの前年マシンの空力デザインをコピーしたとして物議を醸した。この件は最終的にブレーキダクトを違法に複製したとしてレーシングポイントが処罰を受ける結末となった。
この事件を受けて統括団体の国際自動車連盟(FIA)は、撮影した写真をCADモデルに落とし込み、リバースエンジニアリングする事を防ぐべくレギュレーションを改訂した。
FIAは改良されたAMR22の「多くの特徴が競合他社のものに似ている」として、その合法性を巡って調査を行ったが「不正行為は認められない」と判断。単にライバルチームの影響を受けたデザインに過ぎないと発表した。
これに対してレッドブルは「模倣は最大の賛辞だが、デザインの複製に関しては当然、FIAの”リバースエンジニアリング”ルールに従わなければならない」として「知的財産の持ち出しがあったとすれば、それは明らかなレギュレーション違反であり、深刻な問題である」と反応した。
レッドブルが不満の声を上げた事についてアストンマーチンのマイク・クラック代表はSky Sportsとのインタビューの中で、新車発表時にシーズン途中で大々的にクルマに変更を加える可能性を仄めかしていた事に触れて「これはごく普通の開発プロセスにすぎない」と主張した。
レッドブルの不満は単に似ていると言う事だけが原因ではない。Sky Sportsのテッド・クラヴィッツは「レッドブルは、ここ数ヶ月間に渡ってレッドブルからアストンマーチンに移籍した人々がデータを持ち出したのではと疑念を抱いているんだ」と説明する。
「当然それはレッドブルとの契約違反になる。アストンマーチン側はこれを強く否定していて、最新のアップデートの詳細をFIAや全ての利害関係者に提供したと主張している」
「FIAはシルバーストンにあるアストンマーチンのファクトリーに赴き、アップグレード・パッケージを作成するために使用されたデータと全てのプロセスを確認した」
「その結果としてFIAは今回のアップデートについて、技術規定が許す範囲内でアストンマーチン自身が正当かつ独立した作業の結果として生み出したものだという事を書面にしたんだ」
アストンマーチンは目標に掲げるチャンピオンシップ争いに向け、各方面から人材を採用し続けている。その中にはレッドブルの元空力責任者であるダン・ファローズも含まれている。
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはSky Germanyとのインタビューの中で「我々のチームにいた7人もの人材が引き抜かれた事、そしてチーフ・エアロダイナミストが不釣り合いなほど高い報酬でアストンマーチンに引き抜かれた事を考慮しなけばならない」と述べ、独自に調査を進めていく考えを示した。
移籍に際しては当然、古巣からデータや資料を持ち出す事はできないが、一度知り得てしまった事を忘れるという事もまた、できない。だが、マルコは記憶だけを頼りにこれほど正確にデザインをコピーできるとは考えておらず「データがダウンロードされた証拠がある」とまで口にした。
なおアストンマーチンのレギュラードライバーを務めるランス・ストロールは、2台のマシンの類似性について「確かにレッドブルからはダンが移籍してきたけど、彼が加わったのは先月の事だ」と述べ、僅か1ヶ月で今回のアップグレードを開発できるはずもないと指摘した。
Inbetween session refreshment, anyone? 💚 pic.twitter.com/6WMAlmcwZJ
— Oracle Red Bull Racing (@redbullracing) May 20, 2022