アルピーヌF1、米国企業への株式売却の噂とロッシ劇場の可能性
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ルノー・グループが英国エンストンのF1チーム、アルピーヌの少数株式を売却するとの憶測が流れたのと時を同じくして、ローラン・ロッシCEOは公の場でチームへの不満を爆発させた。
売却候補として名前が挙げられているのは、第5戦マイアミGPでパートナーシップの契約が発表されたアメリカの自動車小売業者「AutoNation」だ。
これは1戦限りのスポンサー契約だが、これを機に両者は自動車小売市場における将来的な提携の可能性について協議を開始した。パドックでは少数株の売却が噂されており、オトマー・サフナウアー代表は否定も肯定もしていない。
アルピーヌの市販車マーケットは現在、ヨーロッパを中心としたものだが、3ドアハッチバックのコンセプト「A290_β」をベースとした2024年の市販を予定するEVスポーツを含むラインナップの拡充と共に、アジアや米国への市場拡大を狙っている。
株式の売却はアルピーヌにとって、300を超える小売店を持つAutoNationの販売網を手にするだけでなく、ルノーによる財政負担を低減しつつ、参戦資金を確保するという点でも理に適った戦略と言える。
少数株式の売却は珍しいものではない。メルセデスは2020年12月、筆頭株主のダイムラーが60%の持ち株利率を減らし、トト・ウォルフとINEOSが各々30%を保有する3頭支配体制へと移行した。
上位争い復帰に向けて「100レースプロジェクト」を掲げるアルピーヌは現在、時代遅れとなったシミュレーターの刷新に加えて、有能な空力エンジニアの採用や新しいソフトウェアツールの導入に関して資金を投入する事を計画している。
売却話が囁かれたのと同じタイミングでロッシは、フランスのテレビ局「Canal Plus」とF1公式サイトのインタビューを相次いで受け、チームのオペレーションを趣味・道楽的と形容し、ミスの責任を取らないのは「許されない」と不満をあらわにし、その責任を負うのはサフナウアーだと名指しした。
売却話と公然の不満表明が重なったのは単なる偶然という線も十分にあり得るが、懐疑的に見ればロッシによる潜在的な買い手候補に対するエクスキューズであった可能性も考えられる。
もしもロッシとルノーのルカ・デメオCEOが画を描き、現在の成績不振はチームの資質に問題があるためではなく、単に一部の幹部の能力に問題があるためであり、将来性には何らの問題もないのだと買い手に対してアピールしたかったのだとすれば、例の発言がシックリくるのは否めない。