レッドブル・ホンダとメルセデス、優勝候補達は何故フェラーリに完敗したのか? / F1シンガポールGP

メルセデスのルイス・ハミルトンを追いかけるフェラーリのセバスチャン・ベッテルとレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、2019年F1シンガポールGP決勝レースにてcopyright Daimler AG

車体特性を考えれば、マリーナベイ市街地コースでの勝者はレッドブル・ホンダかメルセデス。ほんの数日前まで誰もがそう信じて疑わなかった。だが、表彰台の頂点に立ったのはセバスチャン・ベッテル。2位フィニッシュを果たしたのはシャルル・ルクレールだった。

コンテンダーたちは何故、スクーデリア・フェラーリに敗れ去ったのだろうか?

それは単にフェラーリが強かったからだ、と敬意を表したい。マラネロが新たに投じたアップグレード・パッケージは上手く機能していた。新型のフロア、ディフューザー、リアウィング、そして改良されたノーズとフロントウイングは、課題のダウンフォース不足を解消し、SF90を新たな境地へといざなった。そして、チームはそのポテンシャルを100%引き出す事に成功した。

更にピットウォールは、ドイツチームの十八番のようなアグレッシブな戦略と迅速・的確な判断によって、1-3フィニッシュを1-2フィニッシュへと昇華させ、マシン性能とオペレーションの双方で最高の仕事をしてみせた。つまり、完勝。完全制覇だった。

シミュレーターでの作業ミス

レッドブル・ホンダが奮わなかった理由の一つは、事前に行われたシミュレーターでの作業ミスだった。少なくとも、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、そう考えている。

マルコによると、路面の形状や凹凸のレベル、そして縁石のサイズなど、実際のものとは異なる誤ったデータに基づきシミュレーター作業を行っていたために、適切なセットアップを見いだせなかった事が敗因だという。実際の路面はかなり荒くバンピーであったが、シミュレーターで使われたデータはそれらを過小評価したものであったため、チームは全体的に車体を固め過ぎてしまった、というのだ。

特にそれは、より多くの燃料を積んで走る決勝レースより高速での走行となる予選において大きな障害となった。フェルスタッペンは「レースでのクルマは改善してたけど、そうは言っても3位以上を獲得するのは無理だった」と語っている。

全てが不十分だったメルセデス

メルセデスは、W10が持つ高い低速性能を引き出しきれなかった。メルセデスのエンジニアが独AMuSに明かした内容によると、チームは路面の隆起と縁石をどのように評価するかについて頭を悩ませ、サスペンションのセットアップを突き詰める事が出来なかったのだという。

レース中の3度のセーフティーカーも助けにはならなかった。レッドブル・ホンダとフェラーリにとっては問題とはならなかったようだが、ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスは冷えたタイヤに再び熱を入れ、適切なグリップレベルを得るために数周を要した。予選でフェラーリを倒せなかった理由もタイヤのウォームアップであった。

戦略も後手後手にまわった。ストラテジストのジェームス・ヴァウルズは「私がレースを台無しにした」と自責の念に駆られた。マックス・フェルスタッペンとセバスチャン・ベッテルがいち早くピットへと動いたにも関わらず、メルセデス陣営は意にも介さなかった。その結果、ハミルトンは一気に2つもポジションを失った。アンダーカットを過小評価したのが原因だった。

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