レッドブル技術投入の「ベガス改良型VCARB」30億円を懸けた6位決戦の見通しとアプグレの詳細

ガレージでコースインを待つリアム・ローソン(RBフォーミュラ1)のVCARB 01、2024年11月21日F1ラスベガスGPフリー走行Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1コンストラクターズ選手権6位奪還に向けて角田裕毅擁するRBは、ラスベガスGPよりレッドブルの2024年型「RB20」のリア・サスペンションをVCARB 01に採用した。

前戦サンパウロGPでアルピーヌが奇跡のダブル表彰台を獲得したことにより、ファエンツァのチームは8位に後退したが、それでも6位につけるアルピーヌとの差はわずか5ポイントに過ぎない。

6位と8位との差は賞金面で2,000万ドル(約30億円)以上の差があると見られており、残り3戦での逆転は、2025年シーズンの財政に与える影響を踏まえても非常に重要だ。

リア構造の変更がもたらしたベガス空力改良

RBはラスベガスで以下の4種類の空力アップグレードを持ち込んだ。

  • 改良型コークボトル/エンジンカバー
  • 新型リア・サスペンション
  • 形状変更のリア・ウィングレット
  • 改良型リアビューミラー

車両後部への気流を改善し、全体的な空力効率を向上させるべく、 サイドポッド後方の傾斜は低く抑えられ、局所的なダウンフォースの増加を狙ってリアコーナーのウィングレット形状が変更された。また、モンツァ仕様をベースに、リアビューミラーは更なるドラッグ低減が図られた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ラスベガス市街地コースを周回するリアム・ローソン(RBフォーミュラ1)、2024年11月21日(木) F1ラスベガスGPフリー走行

これらの変更の一部は、リアエンドを最新型のレッドブル製へと変更したことに伴うメカニカルプラットフォームの調整により実現した。

チームは新しいリアサスについて、「新しいエンジンカバーの空気の流れに合わせてアームの向きを調整した」としているが、これはあくまでも空力的観点での話であって、肝はメカニカル面にある。

英The Raceによると、RBのレーシング・ディレクターを務めるアラン・パーメインは、これが「新型」のサスペンションであること、そしてこれによって「空力面とメカニカル面のアップデート」がもたらされたと認めた。

アップグレードの影響、2025年への布石

RBはサマーブレイク以前、地道にポイントを重ねて6位の座を掴み取ったが、シーズン中盤に向けた開発で苦戦したことで8月以降は低迷し、メキシコまでの6戦で加算したのは僅か2ポイントという有り様だった。

しかしながら、終盤に向けた幾つかのアップグレードによって徐々に状況を立て直し、前戦サンパウロGPでは5月マイアミに次ぐ8ポイントの大量得点を上げた。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ガレージ内で談笑する角田裕毅(RBフォーミュラ1)とリアム・ローソン、ローラン・メキーズ代表、2024年11月21日(木) F1ラスベガスGPフリー走行

今回の改良は、この勢いを後押しし、コンストラクターズ選手権6位奪還に役立つものになるのだろうか?

アップグレードについてパーメインは、「シミュレーションやシミュレーターでの結果を見る限り、少しではあるが向上が見られている」「ラップタイムが向上するはずだ」と自信を示し、6位奪還に向けては「完璧な週末を3回過ごせれば目標を達成できるはずだ」と語った。

しかしながら現実には、ライバルの状況次第といった側面もある。「正直、アストンマーチンのパフォーマンスがどの程度かにも左右されるだろう」とパーメインは語る。

「彼らはやや不安定で、ブラジルでは確かに調子を落としていたが、そこから復調する可能性が高いと考えている。そのため、彼らがどの位置にいて、どのくらいポイントを獲得できるかに依存するだろう」

角田裕毅が10番手で締め括ったラスベガスGPの初日プラクティスでアストンは、ランス・ストロールが13番手、フェルナンド・アロンソが14番手につけた。

今シーズンに向けた取り組みと同じように、RBはシーズン最終戦まで手を緩めず、来季に向けた開発を実質的に前倒しする形のアプローチを採るものと見られる。つまり、最新型のVCARB 01は、来季型のVCARB 02の出来を占うものとなる。

遅れた導入タイミング

レッドブルの姉妹チームは風洞を含め、F1マシンの設計・開発に必要な全てのリソースを備えているが、例年、一部の旧型コンポーネントをレッドブル・アドバンスト・テクノロジーから購入している。

前季型から流用できるものが殆どなかったため、現行のグランドエフェクトカーが導入された2021年こそ、当初から最新型のコンポーネントを導入したが、以降は予算の関係もあってシーズン終盤に最新型を導入している。

昨年に関して言えば、当時の最新型であるレッドブルRB19のリアエンドに変更されたのは9月中旬のシンガポールだったが、今季は11月下旬のラスベガスにもつれ込んだ。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ピットウォールでローラン・メキーズ代表と話をするRBの車両パフォーマンス部門を率いるギヨーム・デゾトゥー、2024年11月21日(木) F1ラスベガスGPフリー走行

導入のタイミングについてパーメインは、何らかの要因でやむを得ず遅れたわけではなく、「意図的に決断」した結果であると説明した。具体的な理由については明かさなかったが、シーズン序盤から続く相関の問題により開発が停滞していたこと、さらにRB20のリアサスの実装と最適化がRB19と比較してより複雑であることが背景にあると見られている。

実際パーメインは、導入に伴う課題について「簡単だったとは言いたくない」と語った。

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