最高額更新なるか…シューマッハの1998年フェラーリF1「F300」が競売に、無敗のシャシー187
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ミハエル・シューマッハが1998年のF1世界選手権でドライブしたスクーデリア・フェラーリ「F300」がRMサザビーズのモントレー・オークションに出品された。落札予想価格は600万~800万ドル(約8億2,225万~約10億9,634万円)。F1マシンの落札最高額を塗り替える可能性がある。
出品されたのはカナダ、フランス、イギリス、イタリアの4戦で実戦投入されたシャシーナンバー「187」だ。出場した全てのレースで優勝を果たした無敗のシャシーという点がユニークだ。F300は全9台が製造された。
1983年以来のコンストラクター及び、1979年のジョディー・シェクター以来となるドライバーズタイトル奪還に向けマラネロは、後にフェラーリ黄金期の立役者となるロス・ブラウンとロリー・バーン監修の元、800馬力(最高回転数17,500rpm)を誇る新開発の3リッターV10エンジン「Tipo 047」を搭載するF300を生み出した。
この年はマシンの全幅が18cm近くも狭くなり、スリックタイヤは廃止され、ブレーキシステムの構造及びサイズに変更が加えられた。
レギュレーション変更に伴いウィレム・トートが設計した斬新な”ペリスコープ排気システム”は、7速シーケンシャルギアボックスの上部に排気口を設置するもので、そのレイアウトから上方排気システムとも呼ばれた。エンジン出力の向上だけでなく、後方のパッケージングをコンパクトにまとめる事が可能となり、空力面でもゲインがあった。
シーズン中盤に向けて製造されたシャシー187は、5月末のモナコGPで初めてコースに持ち込まれた。ただ、実戦投入されたのはジル・ビルヌーブ・サーキットでのカナダGPとなった。予選3番手のシューマッハはピット戦略にも助けられ、ベネトンのジャンカルロ・フィジケラに16秒もの大差をつけ、22台中12台がリタイアする大波乱のレースを制した。
6月28日のマニクールでのフランスGPでは、タイトル争いのライバル、ミカ・ハッキネンにポールを許す2番グリッドからスタートするも、シューマッハは僚友エディ・アーバインを従えフェラーリに1-2フィニッシュをもたらした。
7月12日の翌イギリスGPでもハッキネンがポールを獲得。シューマッハは予選2番手から決勝に挑んだ。断続的な雨の影響で13台がリタイアを余儀なくされる荒れたレースとなった。
ハッキネンは一時、2番手シューマッハに49秒もの大差でリードしていたものの360度スピンを喫してフロントウイングを破損。終盤のセーフティーカー解除後にもミスを犯し、シューマッハに3連勝を許した。これによりフェラーリは、マクラーレン・メルセデスとの両タイトル争いに復帰した。
その後、シャシー187はファクトリーへと戻され4戦の休息を経た後、最終3戦目のイタリアで再び現場へ。シューマッハはジャック・ビルヌーブを抑えてポールを獲得すると、僚友アーバインを連れ添ってトップチェッカーを受け、モンツァのグランドスタンドに詰めかけたティフォシを沸かせた。
これによりシューマッハは計80点としてドライバーズタイトル争いでハッキネンと並び、コンストラクターでもマクラーレンに対して10ポイント差まで詰め寄ったが、シャシー189で挑んだ鈴鹿での最終戦でポールを獲得するも右リアタイヤのバーストによってリタイヤに終わり、フェラーリは両選手権で僅かに及ばず2位に終わった。
スクーデリアはシャシー187を1999年9月まで保有した後、少量のスペアと共に個人に売却。以来23年間に渡り、シャシー187は一般公開されることもレストアされることもなくオリジナルの姿を留め、完全な状態で保存されてきた。
F1マシンの落札価格の過去最高額は、2017年のRMサザビーズのオークションで競り落とされたフェラーリF2001だ。750万ドル(約10億2,725万円)の値がついた。無敗のシャシー187は、これを塗り替える事ができるだろうか?