メルセデス「W11のダウンフォースは昨年型を遥かに凌ぐ」2020年型マシンの秘密明かす

カタロニア・サーキットのピットに停まるメルセデスAMGのW11、F1バルセロナテストにてcopyright Daimler AG

メルセデスAMGのテクニカル・ディレクターを務めるジェームス・アリソンは、2019年の「W10」に何百もの設計変更を加えた2020年の新車「W11」について、ダウンフォースレベルにおいては昨季型を”遥かに凌いでいる”と語り、速さの秘密の一端を明かした。

プログラムの内容や搭載燃料量、そしてエンジンモードなどの諸条件が異なるため、テストでのタイムシートはチーム間序列を正確に表しているわけではないが、それでもなお、第一回プレシーズンテストでのメルセデスは、レッドブル・ホンダやフェラーリに対して優位性を示していた。

昨年のチャンピオンマシン「W10」は、カタロニア・サーキットの第3セクターに代表されるような低速セクションで高いアドバンテージを誇っていたが、バルセロナテストでのW11は低速での優位性はそのままに、中速コーナーでの際立ったパフォーマンスが強い印象を与えていた。

テストを振り返ったアリソンは「車体前方の空力効率を改善するために、フロントコーナーの構造を大きく変更し、ホイール内部の細部および、サスペンションとホイールとの結合部の構成を見直した。難しいプロジェクトではあったが、エアロ特性を大幅に向上させる事ができた」と述べ、開発の詳細について説明した。

進化を遂げたのはフロント側だけではない。アリソンはリアサスペンションに「非常に冒険的な」仕組みを採用し、側面の衝撃吸収構造に関しては過去3年に渡って継続してきたものを捨て去ってまで新しい設計を採用したと語る。

「我々は後部、特にロアアームのウィッシュボーンに新しいジオメトリーを導入した。これによって空気力学的なチャンスが生まれる事となり、更なるダウンフォースをもたらす事が可能となった。また、サイドインパクトストラクチャーに関しては過去3シーズンに渡って下方に配置してきたが、今回は上方に移動させた」

昨季型「W10」はシーズンを通してライバルを圧倒し続け、チームにコンストラクタータイトルを、そしてルイス・ハミルトンにドライバータイトルをもたらした。メルセデスは何故リスクを背負ってまで”アグレッシブ”な設計を押し進めたのだろうか? アリソンは次のように説明する。

「ただ単に、もっと速さに磨きをかけたかった。保守的なアプローチも非常に魅力的だったが、最終的にそれでは十分でないと判断した。我々はライバルの息づかいを肩越しに感じていた。彼らは貪欲だ。更に開発を推し進めなければ、彼らに喰われてしまう事は分かっていた」

むろん、改善を果たしたのはシャシーだけではない。PU部門の責任者を務めるアンディ・コーウェルが既に明らかにしているように、全面的に刷新された今季型パワーユニット「M11」は、馬力だけでなく、より高温域での稼働が担保されている。これにより昨季型が弱点としていたオーバーヒートの解決が見込まれているが、アリソンはそれだけではなく空力学的な利点も強調する。

「より高い温度帯でも機能するということは、ラジエーターを小型化できるという事だ。このマシンが過去数シーズンのものと比べてよりスリムになっている理由の一つがここにある。昨年のシャシーはボディワークの側面が突き出ていたが、エンジン部門がパワーユニットの開発に投資した結果、今年のシャシーは更に狭くなっている」

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