インディカー第7戦デトロイト:エリクソン、パワー”激昂”の大転落劇経て8年ぶりの勝利!佐藤琢磨は悔しい4位

チームメンバーと抱き合って初優勝を喜ぶチップ・ガナッシのマーカス・エリクソン、2021年6月12日のインディカー第7戦デトロイトGPレース1にてCourtesy Of INDYCAR

2021インディカー・シリーズ第7戦シボレー・デトロイトGPの決勝レースが現地12日(土)にベルアイル・パーク市街地コースで行われ、予選15番手のマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)が70周のストリート戦を制し、キャリア37戦目にして初優勝を飾った。

30歳のスウェーデン人ドライバーが表彰台の頂点に上ったのは、F1デビュー前の2013年GP2シリーズ第6戦ニュルブルクリンのレース1以来、実に8年ぶりの事だった。クルマを降りたエリクソンは「最後に勝ったのは子供の頃だったような気がするよ!」と述べ、感極まったような様子で満面の笑みを見せた。

2位は予選12番手のリーナス・ヴィーケイ、3位はポールシッターのパトリシオ・オワード(マクラーレンSP)という結果となった。

Courtesy Of INDYCAR

表彰台に上がったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)、リーナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター)、パトリシオ・オワード(マクラーレンSP)、2021年6月12日のインディカー第7戦デトロイトGPレース1にて

佐藤琢磨、戦略と運を味方に4位

レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は16番グリッドからスタート。ピットストップで大きくタイムをロスする不運に見舞われるも、戦略とフルコースイエローを味方につけてポジションアップ。残り3周でのリスタートに2番手で臨んだものの、後続2台に交わされ4位フィニッシュした。

レースを振り返った佐藤琢磨は「チャンスを活かせず少し悔しい」としながらも、赤旗続きの難しい展開の中で「良い戦いができた」として、翌日に控えるレース2に向けて「しっかり準備をして臨みたい」と満足した様子を見せた。

残り3周の劇的展開、激昂するパワー

唯一のプラクティスで最速を刻み、直前の予選で7番手につけたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は最多37周のリードラップを刻んだものの、最終盤に不運に見舞われた。

ロマン・グロージャン(チップ・ガナッシ)のクラッシュに伴う赤旗からの残り3周のスプリントに向け、ECUがオーバーヒートした事でエンジンが再始動せず、パワーはシボレーのお膝元で約束されたかに思われた勝利を逃した。

パワーは1周遅れでレースに復帰。20番手でヘルメットを脱ぐと、クルマの冷却許可を巡ってオフィシャルを非難し、更にはフルコースイエローではなく赤旗を提示した事にも怒りを爆発させた。

「インディカーに腹を立てている。僕は(赤旗の際にピットレーンに)一番最初に入ったのに、彼らは最後のクルマが入ってくるまでファンを付ける事を許さず、ECUが焼けてしまった」とパワー。

「僕らはこれまでに幾つもの提案をしてきたけど、レースコントロールの連中はドライバーの話を全く聞かないし気にもかけない。今日は一生懸命に働いたのに、こんな事になってしまった」

90分間の赤旗中断

レースは3分の1を迎えようかというタイミングで相次ぎ事故が発生した。

22周目にマックス・チルトン(カーリン)が左リアをバリアに激突させると、25周目にはフェリックス・ローゼンクヴィスト(マクラーレンSP)が単独でターン6のタイヤバリアに正面から激突し、1回目のフルコースイエローが振られた。

レスキューチームが直ぐに現場に到着したものの、なかなかコックピットから救い出すことができず、28周目にレッドフラッグが振られる事となり、全車ピットレーンにクルマを並べた。最終的にローゼンクヴィストが担架に乗せられるのに10分程度を要した。

メディカルセンター長の説明によると、ローゼンクヴィストは脳震盪もなく状態は安定していたとの事で、精密検査のために地元病院に搬送された。

バリアの復旧に手間取った事もあり、レースは1時間半に渡って中断された。

レース概要

Courtesy Of INDYCAR

インディカー第7戦デトロイトGPレース1スタート直後の様子

オープニングラップはクリーンに消化され、レッドを”捨てタイヤ”と見たヴィーケイやスコット・マクラフリン(チーム・ペンスキー)ら複数台が2周目を終えてすぐにピットイン。ポールポジションのオワードも3周目にピットストップを行った。

ピットアウト直後の5周目にコルトン・ハータ(アンドレッティ)に接近を許したジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、ホイールの締め付けが甘かったか。左リアタイヤが外れるハプニングに見舞われた。

翌周にはライアン・ハンター=レイ(アンドレッティ)が左リアをバリアにヒットさせ緊急ピットイン。6周遅れと戦線離脱した。チームメイトのアレクサンダー・ロッシは12周目にオワードを交わして一時、首位争いを演じたものの最終7位に終わった。

レッドで好ペースを刻む佐藤琢磨は次々と先行車を交わしていき、2番手を走行していた18周目まで第一スティントを引っ張りピットイン。だがピットストップの際に曰く「メカニックのホイールガンに問題が発生」したとの事でタイムを失い、後続のローゼンクヴィストが14番手でコースに復帰した一方、18番手と大きく後退した。

ジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ)はマシントラブルで11周目にピットイン。リタイヤ第一号となった。

数少ないブラックスタートのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は、ペースが上がらないレッド勢を交わしていき、12周目にパワーをオーバーテイク。 ラップリーダーに躍り出たが、ロッシ共々イエローの不運に見舞われ最終8位に甘んじた。

3分の1を消化しようかというタイミングでローゼンクヴィストがクラッシュ。90分近くに渡る赤旗中断を経て、ペースカー先導の下、各車がコースへ戻ると1周後にピットが開放され、ラップリーダーのディクソンや第一スティントを早々に切り上げたクルマの大部分がピットインした。

これによって第一スティントを長く引っ張りツースティント目を走行していたパワー、エリクソン、佐藤琢磨がトップ3に並び、ディクソンは11番手にまで後退した。

レースは32周目に再開され、ディクソンは3台抜きで8番手に。佐藤琢磨は走行妨害のペナルティを取られてしまい、ヴィーケイにポジションを譲り4番手に後退した。

最新スティントに向けていち早くピットに入ったのはディクソン、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)、ジェームズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ)。44周目に最後のピットストップを行った。

佐藤琢磨は47周目にピットイン。今度はトラブルなく作業を終え10番手でコースに復帰した。その翌周にアンダーカットを防ぐべくヴィーケイがピットイン。更にその翌周には、パワーとエリクソンが最後のピットストップを行った。

佐藤琢磨はオワードにオーバーカットを許して一時、実質的な5番手に後退したものの、52周目にコース上でかわして4番手に浮上すると、周回遅れのダントン・ケレット(A.J.フォイト)の追い抜きに手間取るヴィーケイを残り7周でオーバーテイク。3番手にポジションを上げた。

残り6周でグロージャンがクラッシュを喫し、レースはエリクソン、佐藤琢磨、ヴィーケイの並びで残り3周でリスタートを迎えた。

佐藤琢磨はタイヤの熱入れに課題を抱えていたのか、第2スティントの序盤同様にペースが上がらず、ターン1でヴィーケイとオワードに先行を許し4番手に後退。この際にクルマをマーブルの上に乗せてしまい防戦一方となり、僚友グレアム・レイホールを従えて4位フィニッシュした。

レース2は現地日曜の12時50分にグリーンフラッグが振られる予定で、日本ではGAORA SPORTSが日本時間13日(日)25時より生中継する。視聴には「スカパー!」の他、光回線を使った「ひかりTV」「auひかり」なら、面倒なアンテナ設置なしでインディカーを楽しむ事もできる。更に今季からはHulu ライブTVでもストリーミング配信されている。

2021年デトロイトレース1決勝結果

Pos. Start Driver Gap
1 15 マーカス・エリクソン
Chip Ganassi
–.—-
2 12 リーナス・ヴィーケイ
Ed Carpenter
1.7290
3 1 パトリシオ・オワード
McLaren SP
1.9105
4 16 佐藤琢磨
RLL Racing
8.1688
5 20 グレアム・レイホール
RLL Racing
9.4645
6 21 サンティノ・フェルッチ
RLL Racing
9.5670
7 2 アレキサンダー・ロッシ
Andretti
10.3406
8 11 スコット・ディクソン
Chip Ganassi
10.8956
9 4 エド・ジョーンズ
Dale Coyne
11.9428
10 5 ジョセフ・ニューガーデン
Team Penske
12.5061
11 10 セバスチャン・ブルデー
A.J. Foyt
13.5792
12 9 シモン・パジェノー
Team Penske
13.8274
13 17 コナー・デイリー
Ed Carpenter
14.7925
14 6 コルトン・ハータ
Andretti
16.0887
15 25 アレックス・パロウ
Chip Ganassi
17.2534
16 19 ジャック・ハーベイ
Meyer Shank
18.2898
17 13 ジェームズ・ヒンチクリフ
Andretti
19.0114
18 24 ダルトン・ケレット
A.J. Foyt
1 lap
19 23 スコット・マクラフラン
Team Penske
3 lap
20 7 ウィル・パワー
Team Penske
3 lap
21 8 ライアン・ハンター=レイ
Andretti
5 lap
22 18 マックス・チルトン
Carlin
5 lap
23 3 ロマン・グロージャン
Dale Coyne
7 lap
24 22 ジミー・ジョンソン
Chip Ganassi
21 lap
25 14 フェリックス・ローゼンクビスト
McLaren SP
47 lap

第7戦消化時点でのポイントランキング

第7戦出走者を対象に、レース結果を受けてのポイントランキングを以下にまとめる。

Pos. Driver Pts. Total Gap
1 アレックス・パロウ
Chip Ganassi
15 263 0
2 パトリシオ・オワード
McLaren SP
37 248 -15
3 スコット・ディクソン
Chip Ganassi
25 237 -26
4 リーナス・ヴィーケイ
Ed Carpenter
40 231 -32
5 シモン・パジェノー
Team Penske
18 219 -44
6 ジョセフ・ニューガーデン
Team Penske
20 204 -59
7 マーカス・エリクソン
Chip Ganassi
51 189 -74
8 グレアム・レイホール
RLL Racing
31 179 -84
9 コルトン・ハータ
Andretti
16 170 -93
10 佐藤琢磨
RLL Racing
32 163 -100
11 スコット・マクラフラン
Team Penske
11 154 -109
12 ウィル・パワー
Team Penske
13 141 -122
13 ジャック・ハーベイ
Meyer Shank
14 135 -128
14 アレキサンダー・ロッシ
Andretti
27 128 -135
15 セバスチャン・ブルデー
A.J. Foyt
19 108 -155
17 ライアン・ハンター=レイ
Andretti
9 103 -160
18 コナー・デイリー
Ed Carpenter
17 102 -161
19 エド・ジョーンズ
Dale Coyne
23 100 -163
21 ロマン・グロージャン
Dale Coyne
8 89 -174
22 フェリックス・ローゼンクビスト
McLaren SP
5 87 -176
23 ジェームズ・ヒンチクリフ
Andretti
13 87 -176
24 サンティノ・フェルッチ
RLL Racing
28 85 -178
26 ダルトン・ケレット
A.J. Foyt
12 74 -189
29 マックス・チルトン
Carlin
8 36 -227
31 ジミー・ジョンソン
Chip Ganassi
6 31 -232

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