2017年のF1テレビ視聴者数は世界累計14億人。前年比増を達成も、人気低迷の現状浮き彫りに

レースを観戦するF1ファンたちcopyright Mclaren

1月5日(金)、フォーミュラ1世界選手権を運営するF1は、2017年のテレビ視聴者数及びデジタルプラットフォームにおける各種実績値を発表した。F1テレビ番組の累積総視聴者数は14億人となり2016年比6.2%の増加を達成。また、F1公式の主要SNSのフォロワー数は1,190万人となり前年比54.9%の大幅増となった。

累積視聴者数や動画再生数などの数字は向上したが、これはテレビ及びデジタルプラットフォームでのコンテンツ配信の絶対数が増加したためと考えられる。F1ファンの絶対数を計る上で重要となる”ユニーク視聴者数”に大きな変化はなく、F1人気低迷の現状が改めて浮き彫りとなった。

F1テレビ視聴者数 低下傾向に歯止め

F1視聴者数世界上位20カ国におけるレース及び関連番組を含むF1番組の年間累積視聴者数は14億人となり、16年比で6.2%増を達成した。最も多くの累積視聴者を抱えたのは上から順にドイツ、ブラジル、イタリア、イギリスの4カ国で、共に昨年よりも増加した。

その中で最も伸びが大きかったのはイタリアで19.1%増、これにブラジルの+13.4%、イギリスの+3.9%、そしてドイツの+0.9%が続く結果となった。他方、最大の増加率を記録したのは中国で+42.2%、これに+14.3%のスイスと+14.1%のデンマークが続いた。

関連番組の視聴者増の背景には、歴代初の試みがあった。F1はイギリスGP関連特別イベントとして「F1 Live」と銘打った催しをロンドンのトラファルガー広場で開催、その模様はYoutubeや各国テレビで放映された。

レース番組に限ってみると、年間の累計視聴者数は6億3千万人(ライブ視聴及び録画視聴の合計)に留まった。ライブ視聴者数は1%増加、決勝レース以外のフリープラクティスと予選セッションの視聴率が向上した。レースの視聴者数はF1愛好者の数を計る上で重要な指標だが、こちらに大きな変化はなかった。

ユニーク視聴者数は3億5千300万人、アメリカ合衆国の総人口に相当する数の人々が、年間を通して少なくとも一度はF1番組を視聴した。2015年に23年ぶりにグランプリが復活したメキシコは+22.6%、躍進を遂げたフェラーリお膝元のイタリアが+16.7%、フェルナンド・アロンソが参戦したインディ500の開催地アメリカが+13%の増加を記録した。

世界最大となる7,600万人のF1視聴者数を抱えるブラジルでは、-1.8%と減少した。長年同国のF1ファンが熱い声援を送っていたフェリペ・マッサは17年限りで引退、今年ブラジルは更なる視聴者数低下が予想される。

集計方法に違いはあるが、2008年に6億人と発表されたテレビ視聴者数は2010年に5億2,700万人にまで低下、以降減少の一途を辿っていたが、今回初めて歯止めがかかった形となった。

ネット及びSNSでの施策効果は上々

F1が運営する各種ソーシャルメディアプラットフォームのユーザー数は大幅に増加、Facebook、Twitter、Instagram、YouTubeで合計1,190万人のフォロワーを獲得、16年比54.9%もの大幅増加となった。F1によれば、これは世界の主要スポーツ及び関連ブランドが運営するSNSの中で、最も大きな成長率だったという。F1に次いで大きく飛躍したのはフォーミュラEであった。

Facebookでの動画再生時間は、2016年に比べて1,600%以上の増加となり、再生回数は3億9,000万回以上を記録した。これは主に予選やレースのハイライト、特に極東で開催された新興レースのコンテンツが大きく影響した。Twitterでは6,400万人以上の人々が動画を視聴、前年比165%増となった。Instagramのフォロワーはほぼ倍増(+93%)となり、380万人に達した。

Formula1の公式ウェブサイトとアプリのユニークユーザー数は、計1億2400万人に達し、16年比7.5%増を達成した。オフィシャルサイトのユーザー数はほぼ横ばいだったものの、アプリユーザー数は1.7%増加、セッション数は37.7%増加した。全20戦中、サイトとアプリを合わせたユニークユーザー数が最も多かったのは中国(+35.6%)、これにシンガポール(+26.7%)と米国(+19.8%)が続いた。

長年に渡ってF1を支配したバーニー・エクレストンに引導を渡した米リバティ・メディアは、17年よりF1人気回復の施策の一つとしてデジタルプラットフォームの活用を推し進めており、その成果が大きく現れた形となった。以前は厳格に規制されていたソーシャルメディアの運用ルールは大幅に緩和され、チームやドライバーはファンとの交流を深めている。

潜在層へのリーチは評価、今季視聴者数の動向に注目

F1のコマーシャル部門の責任者を務めるショーン・ブラッチズは、視聴者数の増加に感銘を受けたと述べるとともに、今後のコマーシャル面での施策方針について以下のように語った。

「昨シーズン注力したのは、持てるプラットフォームを駆使しファンのF1体験を向上させることでした。結果として世界中のファンがF1に対して好感を持ってくれました。この事実に勇気づけられています。2018年は、F1ファンの皆さんに大きな変革を実感してもらえるよう引き続き仕事を進めてきます。我々の仕事は今の職務を重んじながら新しい創造を生み出すことです。F1ファンになるには、今がとても良い時期だと思いますよ」

TV及びネット上でのコンテンツ配信の絶対数を増やしたことで、今後F1を視聴する見込みのある潜在的な層へのリーチはある程度成功したと言える。舵取りを受け次いで直後のシーズンだけに、今回の発表を以てリバティ・メディアの手腕を評価するのは公平ではない。2018年のユニーク視聴者数の動向に大きな注目が集まる。

なお発表によれば、テレビ視聴者数の世界上位20カ国に日本は含まれておらず、蚊帳の外に置かれている。2016年以降、アジアのF1放映権は米FOXスポーツアジアが有している。日本における地上波無料放送は消滅しており、現在はフジテレビとDAZNの2社が、それぞれ有料で視聴サービスを提供している。

上位20カ国は次の通り。オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スペイン、スイス、英国、米国。

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