2022年F1:車重増と18インチタイヤ導入に伴うブレーキの変更点
Published:
グランドエフェクトの導入を含むエアロダイナミクスの抜本的改革に大きな注目が集まる2022年のFIA-F1世界選手権。あまりフォーカスされる事がないものの、ブレーキシステムにも変更が加えられている。
バージボードの廃止や前後ウイングの簡素化、フロア下に設置された2本のベンチュリトンネルによるグランドエフェクトなど、今季のテクニカル・レギュレーションは車体が発生させる後方乱気流を制御・削減する事でオーバーテイクの促進を狙う。
また、市場動向を踏まえてタイヤも13インチから18インチへの大口径・低扁平化が行われると共にホイールカバーが導入された。
こうした変更に伴い、マシンの最小重量は昨シーズンの752kgから798kgへと増えた。車重増とホイールの大口径化に伴い、ブレーキ関連の規制も変更された。
2022年シーズンはイタリアのディスクブレーキメーカー、ブレンボがグリッドにつく全10チームにキャリパーを供給する。大半のマシンはキャリパーを含む油圧系統(マスターシリンダー、 バイワイヤユニット)や摩擦材(カーボンディスク、 ブレーキパッド)もブレンボ製を使用する。
ブレンボが全チームにキャリパーを供給するのは1975年以来、47年ぶりの事だ。ブレンボはこの間に27回のドライバーズチャンピオンと31回のコンストラクターズチャンピオンを獲得。計463勝を挙げてきた。
マクラーレンは曙ブレーキに代えてイギリスのコヴェントリーに本社を置くAPレーシングのキャリパーを搭載するが、同社はブレンボ傘下の企業であり、他の9チームはブレンボブランドのキャリパーを採用する。
いずれも規制上限の6ピストンを持つニッケルメッキ仕上げの新型モノブロックキャリパーで、10チームの内の5チームは、前後の制動バランスを調整するリアブレーキ用バイワイヤユニットもブレンボとAPレーシングの共同開発品を採用する。
2022年仕様のカーボンディスクは、厚みは従来と同じ32mmながらもフロント側の直径が278mmから325~328mmへと増やされ、リア側は266mmから275~280mmになり、厚みも28mmから32mmに上がった。いずれも最大1200度まで耐え得る。
ベンチレーション・ホール(排熱孔)の数が減らされた事で空冷性能は低下し、多孔タイプのブレーキパッドも禁止された。
2021年までフロント側のホールは直径2.5mmの1,480個が上限とされていたが、今季は直径が3mm以上となり、孔の数もフロント側が1,000~1,100個に、リアも従来の1,050個から約900個へと減った。
ブレーキシステムの重量はホイール1本に対して約700g増加し、マシン全体では約3kg増加した。
全チームにキャリパーを供給すると言っても、チーム側の要望を受けて各々のキャリパーはカスタマイズされているため同一仕様ではない。剛性より軽量性を求めるチームもあれば、 重くても剛性を優先するチームもある。
ブレンボのエンジニアは各チームと協同し、重量と剛性のバランスに関して各マシン毎の最適値を割り出し、各々に最適なブレーキキャリパーを作り上げた。
ホイール内にはセンサーが設定されており、チームはブレーキディスクとキャリパーの温度を常に把握する事ができる。