アルファタウリ・ホンダ、米エピコと提携…基幹システムがもたらす競争力の向上

米エピコ(Epicor)のロゴが掲載されたアルファタウリ・ホンダの2021年型F1マシン「AT02」のフロントウイング翼端板Courtesy Of Red Bull Content Pool

アルファタウリ・ホンダはマシン製造を含むレースビジネス全体の効率化と合理化によってコース内外でのパフォーマンスを更に引き上げるべく、米エピコ・ソフトウェア社(Epicor Software Corporation)と複数年のパートナーシップを締結した。

既に両者は技術提携を結んでいるが、今回新たにチームの公式ERP(統合基幹業務システム)パートナーとしての契約に合意した。これに伴いF1第17戦アメリカGPよりエピコのロゴがAT02のフロントウイング翼端板に掲げられる。

アルファタウリ・ホンダは製造業向けの生産性プラットフォーム「Epicor Kinetic」を使って、事業全体のあらゆるプロセスとデータを一元的に管理しているが、その目的は製造、在庫管理、コンポーネントテスト、財務といったレースビジネスに関わるあらゆる面を迅速かつ正確に最適化していく点にある。

現行F1マシンは14,000点以上の精密部品で構成されている。個々のパーツの生産・製品寿命管理は非常に複雑で、旧来のソフトウェアと手動による管理体制下でレース当日に適切なパーツを用意する事は決して簡単な仕事ではなかった。

だが、Epicor Kineticを導入する事でチームは、レースカー全体の概略構造と使用されている全部品を自動的にレンダリングし、週末毎のマシンの構造をスナップショットとしてコード化して保存・管理する事が可能となり、更に先進的なサプライヤー見積機能によって、部品到着までの時間を数日から僅か数時間にまで短縮し、同日中に部品を車体に装着できるようになった。

また、車両に取り付けられた900個を超えるセンサーによって収集されたテレメトリーデータを活用し、個々のパーツのパフォーマンス状況を把握して交換タイミングの予測分析に活かしたり、先述のスナップショットを使って部品が抱える潜在的な問題をピンポイントで特定し、問題の再現を防ぐ事も可能となった。

F1と言えば軽量高強度を誇るカーボンファイバーだが、炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたシート状の中間材料には冷蔵設備が必要で、無駄な在庫と過剰発注をなくす事が求められる。Epicor Kineticを使うと炭素繊維の在庫量、ライフサイクル、およびリアルタイムの消費量を即座に可視化する事が可能となり、チームは無駄を排除する事ができる。

「データ駆動型の世界にオフシーズンの文字はない。ビジネスやレース運営のあらゆる面で質の高いデータとインテリジェンスが求められているのだ」とチーム代表のフランツ・トストは語る。

「Epicorは我々の全活動の中核に位置するもので、この提携は我々にとって全く理に適っている。適切な情報を適切なタイミングで適切な担当者に迅速に提供する事で競争力を高める事ができる」

F1チームはコース上でのパフォーマンスを最大化すべく、コース外でも同じようにミリ秒単位の激しい競争を繰り広げている。

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