角田裕毅が感じた「違和感」の正体、”改良型VCARB”の問題点とRBの取り組みを明かすエギントン

ガレージ内で車に乗り込む角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年7月28日(日) F1ベルギーGP決勝(スパ・フランコルシャン)Courtesy Of Red Bull Content Pool

欧州ラウンドの主戦場となる伝統的なミドル~ハイダウンフォース・サーキットでの連戦に向けてRBが持ち込んだアップグレードは不発に終わった。主な問題は改良型フロアによりバランスが損なわれた点にあった。

RBは6月のF1第10戦スペインGPに、新しいリアウイングと、これに向かう空気の流れを改善するための新しいエンジンカバーを導入し、合わせてサイドポッドやフロアの形状を変更した。

アップグレードされたVCARB 01には、アストンマーチンを選手権5位の座から引きずり落とす期待が寄せられていたが、現実には予選でダブルQ1敗退を喫するなど週末全体でライバルに大きく遅れを取った。

今季ワーストの19位に終わった角田裕毅は「レースを通して終始、クルマの挙動に違和感がありました」と頭を掻き、15位でフィニッシュしたダニエル・リカルドは「当初、求めていたようなプラスアルファが感じられないコーナーが幾つかあった」と指摘した。

3連戦の初戦となったカタロニア・サーキットでの不振は当初、DRSフラップのバタつきが注目された新型リアウィングが原因かとも思われたが、スプリントが採用された翌週末のオーストリアGPでの「実験」を経てフロアに問題があったことが発覚し、チームはトリプルヘッダーの最終イギリスGPで旧スペックにロールバックした。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

VCARB 01のリアウイングの違い、2024年6月21日F1スペインGPフリー走行にて

テクニカル・ディレクターを務めるジョディ・エギントンは英AUTOSPORTとのインタビューの中で、「パッケージ全体として、期待していたダウンフォースの増加は確かにあったが、コーナーリング時と高速走行時のクルマのバランスが望んでいた以上に分離してしまった」と説明した。

「あのパッケージに荷重があったことは確かだが、バランスとのトレードオフで、期待していたパフォーマンスを引き出すことができなかった」

「そこで、すぐに1台のクルマを元の仕様に戻し、オーストリアでの連戦でテストを行うことにした。今年のスプリントレースではパルクフェルメが2回、解除されるため、2度に渡って実験を行い、徹底的に検証した。そしてシルバーストンでは、基本的なエアロ構成を採り、フロアを元に戻した」

「フロアは一体型だ。気に入っている部分もあれば、気に入っていない部分もあった。だがそれを分割する選択肢というものは存在しない」

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ガレージ内で角田裕毅と話をするジョディ・エギントン(RBフォーミュラ1テクニカルディレクター)、2024年3月1日(金) F1バーレーンGP予選(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

アップグレードは必ずしもパフォーマンスの上乗せを約束するものではない。特に3シーズン目を迎えた現行グランドエフェクトカーの開発が頭打ちとなりつつある現状においては尚更で、今季はレッドブルやアストンマーチンを筆頭に多くがアップグレードの失敗を経験している。

バルセロナのアップグレードパッケージは不発に終わったものの、RBは試行錯誤の末に問題点を特定し、適切な対応を取ることで学びを得た。エギントンは、失敗から迅速に学び、それを次に活かすプロセスの重要性を指摘する。

「もちろん、すべてのパフォーマンスを引き出せなかったため満足はしていないが、それでもパフォーマンスが全く発揮できないよりは遥かに良い。今では単一の構成に落ち着いている」とエギントンは語る。

「使用を取り止めたフロアから学んだことは多い。幾つかの部分については気に入ったため、次のフロアに適用するつもりだ」

「ほとんどのチームは、一度はアップグレードを元に戻している。すべてを達成できるという考えは甘い。積極的に開発を進める場合、これは避けられないことだ」

「すべてのパーツが保持されるとしたら、それはむしろ問題だと考えるべきだ。『本当にこれでいいのか、もう一度見直すべきではないか?』と疑問を持つべきだ。なぜなら経験上、すべてが上手くいく可能性は低いからだ」

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