FIA、物議の規約改正を承認「懸念すべき権力集中」と欧州から批判噴出

FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長、2023年1月9日(月) ラリーダカール2023(リヤド、サウジアラビア)Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1の統括団体である国際自動車連盟(FIA)は2024年12月13日、倫理委員会と監査委員会に関する規約改正案を承認した。この改正案は、モハメド・ベン・スレイエムFIA会長とカルメロ・サンズ・デ・バロス評議員会会長がこれらの機関を事実上掌握するもので、FIAの説明責任を低下させるとして批判を招いていた。

改正案は、2024年シーズンの各FIA選手権の表彰式を控えルワンダの首都キガリで開催された総会において、それぞれ約75%の賛成を得て可決された。倫理規定の変更については24.51%、監査委員会については23.83%が反対票を投じた。

改正案では、倫理に関する申し立ての監督権限がFIA会長と評議員会会長に限定され、評議員会メンバーの関与が制限された。また、監査委員会からは財務問題に関する独立調査権が削除された。さらに、倫理委員会の報告書の配布も、「メディアへの継続的なリークへの対応」を理由として制限された。

英BBCによると、投票に先立ち、ベルギー王立ツーリングクラブのティエリー・ウィレマルク会長は「これは懸念すべき権力の集中である」と批判し、オーストリア・モータースポーツ連盟の責任者であるオリバー・シュメロルドも「これは良い統治とは言えない」と指摘した。

さらに、モータースポーツUKの責任者であるデイビッド・リチャーズも反対意見を表明し、これは「FIAにおける統治の在り方」を問うもので、「問題はその手続きにある」と述べた。ベルギー、英国、オーストリアだけでなく、ヨーロッパの加盟クラブ間で反対の声が広がっているとされる。

リチャーズとウィレマークによると、改正案はFIAの規約審査委員会による事前審査を経ず、総会前に議論されることもなく、直接、世界モータースポーツ評議会(WMSC)のメンバーによる電子投票にかけられたという。

FIAは声明の中で、倫理委員会は調査を開始するかどうかを独自に評価する権限を引き続き持つと述べたが、これは「議長から要請があった場合」に限られる。

ベン・スレイエムは最近、複数の疑惑について倫理委員会や監査委員会の調査対象となった。

今年3月には、2023年のサウジアラビアGPのレース結果への介入が疑われ、また、同年のラスベガスGPに際して市街地コースの認証を行わないようFIA関係者に圧力をかけたとして内部告発された。

さらに、ベン・スレイエムの私設事務所の財務不正疑惑が浮上し、FIA会長選挙で投票権を持つ加盟クラブへの支払いを目的とした150万ドルの「会長基金」の設立が問題視されたとも伝えられている。

しかし、これらの調査は進展が見られず中止され、元CEOのナタリー・ロビンは、FIAの運営および財務の透明性に対する懸念を表明した後に辞任した。

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