トロロッソ・ホンダ「STR14」はレッドブルの18年型マシン?旧式コンポーネントを多数流用
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スクーデリア・トロロッソのフランツ・トスト代表は、ホンダRA619Hを搭載する2019年の新車「STR14」には、シニアチームであるレッドブル・レーシングの昨年マシン「RB14」のコンポーネントが多数使われている事を明らかにした。
今季はレッドブルとトロロッソの両チームがホンダ製F1パワーユニットを搭載するため、両チームは従来より広範囲に渡ってコンポーネントを共有する事が可能となった。では何故トロ・ロッソは最新型ではなく、性能に劣る旧式パーツの供給を受けるのだろうか?
トスト代表はその理由を、リソース規模の違いから来る開発スピードの違いだと説明する。
「パワーユニット関連のコンポーネントは、レギュレーションで許可されている範囲内でアストンマーチン・レッドブル・レーシングと同一仕様だ。だが、レッドブル・テクノロジーから供給を受ける残りのパーツの大部分は、昨年仕様のものとなる」
「スクーデリア・トロロッソのような小規模なチームでは、大規模チームが持ち得るような迅速な開発と生産プロセスをフォローする事が出来ないのがその理由だ」
ミナルディの買収によって誕生したトロ・ロッソは設立当初、組織内に開発部門を設けること無くレッドブルからシャシー全てを調達しF1に参戦していた。そのため、同一コンポーネントを使用するというアイデアは、トロ・ロッソにおいては決して目新しいものではない。
「マテシッツ(レッドブル総裁)は、レッドブルの育成下にある若手ドライバー育成するために我々のチームを買収する決定を下したわけだが、その前提条件には、一つのテクノロジーセンターを軸として、2チームに対して同一の専門知識と部品を供給するというアイデアが含まれていた」
「実際この運営方法は、ライバルチームがルール変更に賛成票を投じる2010年まで続いた哲学であったが、ご承知の通り規約が変更され、このプロジェクトは終りを迎えた。そのため、すべての部品を自社で設計できる”マニュファクチャラー・チーム”になるために、必要なインフラの構築を余儀なくされた」
「その結果我々は多くの従業員を新しく雇い入れなくてはならず、当時は約100人であったものが、今ではファエンツァとバイチェスターの両ファクトリーで働くスタッフの数は約400人に達している」
トスト代表は、コンポーネントの共通化はトロ・ロッソにコスト削減と資本効率の改善をもたらすと述べ、結果的に更なるマシンパフォーマンスの向上に寄与するだろうと付け加えた。
「今回のレッドブルとのシナジー効果によって我々は、人員を増やすことなくパフォーマンスの向上を追求する事ができる。我々はいくつかの部品を購入する一方で、他のすべてを設計・製造する余裕のあるリソースを抱える事になるのだ」
「我々トロ・ロッソは、他のチームと比較して少数精鋭だ。今季のレッドブル・レーシングにもHondaエンジンが搭載される事によって、我々のテクニカル・ウォーキンググループは、従来以上に多くの時間を費やして細部の作業に取り組む事ができるようになる。細部へのこだわりは、パフォーマンス向上につながるのだ」
STR14の発表に合わせて公表された主要諸元を見ても、レッドブル・テクノロジー製のパーツが多数使われている事がよく分かる。
車体番号 | STR14 |
---|---|
エンジン | ホンダRA619H |
シャシー構造 | トロロッソ製 カーボン・コンポジットモノコック |
フロントサスペンション | トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製 カーボン材ウィッシュボーン、プッシュロッド式トーションバー&ダンパー |
リアサスペンション | レッドブル・テクノロジー製 カーボン材ウィッシュボーン、プルロッド式トーションバー&ダンパー |
ステアリング | トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製 |
ギアボックス | レッドブル・テクノロジー製 リバース付油圧8速ギアボックス+カーボン複合材製メインケース |
ディファレンシャル | 油圧式マルチプレート |
クラッチ | 油圧式カーボンマルチプレート |
排気システム | ホンダ製 |
ブレーキシステム | トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製 |
ドライバーズシート | トロロッソ製 |
タイヤ | ピレリ製 |
燃料システム | トロロッソ/レッドブル・テクノロジー製 |
重量 | 743kg |
レッドブル・レーシングの2018年型マシン「RB14」は”グリッド最速のシャシー”との高い評価を得て、4勝を含む計11回の表彰台を獲得。チームにコンストラクターズ3位をもたらした。確かに供給を受けるのが最新スペックでないのは残念だが、それでもなお余りある性能を秘めている事は間違いない。