CG一切なし!史上初:レッドブル、無重力状態でのピットストップ作業に成功

無重力状態でのピットストップ作業に挑戦するレッドブル・レーシングのプロジェクト「ZERO GRAVITY PIT STOP」での実際の交換シーンcopyright Red Bull Content Pool

ホンダ製F1パワーユニットを搭載してF1世界選手権に参戦しているレッドブル・レーシングがこの程、「ZERO GRAVITY PIT STOP」と銘打った無重力状態でのピットストップ作業にチャレンジした。

ミルトンキーンズのチームはこれまでに、世界で最も標高の高い場所にあるマーシミク峠や、湖面海抜が世界で最も低い死海脇の公道にショーカーを持ち込み走らせるなど、様々な挑戦を行ってきたが、これに飽き足らず、今回は宇宙飛行士の訓練用の大型ジェット「イリューシン76」にクルマを持ち込み、高度33,000フィート(約10km)でのピットストップ作業に挑戦した。プランニングには6週間が費やされた。

ロシアで宇宙開発全般を担当している国営企業のロスコスモスの支援のもと、プロジェクトメンバー達は、モスクワ郊外のスターシティにあるユーリ・A・ガガーリン宇宙飛行士訓練センターを訪れた。ピットクルーのメンバー達は、ゼロG状態での戦いに備え、1週間に渡る宇宙飛行士用の短期集中コースを受講した。

実際のフライトでは、45度の角度で上昇した後に、弾道飛行で約22秒間の無重力状態を作り出す。その後はまた同じように上昇し、放物線を描くように何度も上昇と下降を繰り返す方法が取られた。今回、撮影ディレクターを任されたアンドレアス・ブランズは、撮影とテストのために、合計7回のフライトを実施した事を明かしてくれた。

プロジェクトに指名されたのは2005年型F1マシン「RB1」。現行マシンよりもスリムであるため、カーゴデッキでの取り回しが容易であり、今回の特別なプロジェクトのために倉庫から引っ張り出されたというわけだ。実際のフライトには10名の勇気あるクルーが搭乗した。

無重量状態の開始と終わりの時点でマシンと装備を固定する必要があったため、無重力状態は22秒続くものの、撮影に使える時間は約15秒に設定された。クルマや、タイヤ、それにピットクルーが、デッキから1メートルも浮上しているところで重力が戻る事は避けねばならない。

以下が実際の様子を収めた動画だ。精度の高いCGのようにも見えるが、ヤラセなしの実写そのままとの事。次のプロジェクトの舞台は、”月”が検討されているとかいないとか。

メカニックのポール・ナイトは「最初に弾道飛行を体験した時は、本当に不思議な感じだった」と振り返る。

「担当インストラクターからは、”とにかくじっと座って無重力状態に慣れろ”って言われてたんだけど、上昇しているのか、下降しているのか良くわからないんだ。上昇する時は自分の体重の2倍に相当する2Gの力が加わり、あたかも床に押し付けられているかのようで、ほとんど身動きが取れない。でも、その後の自由落下に転じると感覚が一転するんだ」

サポートチームでチーフメカニックを務めたジョー・ロビンソンは「万全の準備を整えて本番に挑んだが、クルマの修復が必要な場面は殆どなかった」と明かす。

「当然、幾らかダメージはあった。クルーがヘルメットからフロントウイングに激突してね。クルマをファクトリーに持ち帰って”宇宙飛行士がヘッドバットで壊してしまったから修理してよ”って言ったら、みんなゲラゲラ笑ってたよ」

「想像していた以上に大変だった。無重力状態に身を置くことで、普段、如何に重力に依存しているのかを実感させられた。ホイールナットを締めるような些細な作業も凄く大変だったしね。でも本当に良い経験になった」

Photo by Getty Images / Red Bull

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