フェルナンド・アロンソ、2018年シーズン限りでのF1現役引退を発表。インディカー参戦が濃厚に

笑顔のフェルナンド・アロンソ、2018年F1オーストリアGP決勝レース前のピットにてcopyright Mclaren

マクラーレンF1チームは2018年8月14日、レギュラードライバーを務めるフェルナンド・アロンソのF1現役引退を発表した。2度F1の頂点を極めたスペイン人ドライバーは、2018年シーズン限りでF1から姿を消す。

今季限りでマクラーレンとの契約が満了を迎えるアロンソは8月11日、自身のTwitterアカウントに「14-08」という意味深なつぶやきと共に、映画のリールを使ったカウントダウンGIFアニメを投稿。8月14日に何からの重大発表がある事を示唆していた。

スペイン・アストゥリアス州オビエドで生を受けたフェルナンド・アロンソ・ディアスは、2005年にルノーと共に当時のF1史上最年少ドライバーズチャンピオン記録を樹立。翌2006年に連覇を果たし4輪フォーミュラの頂点を極めた。また、今年はF1と並行してトヨタからWEC世界耐久選手権に参戦。6月のル・マン24時間レースで総合優勝を収めた。

今年の7月に37歳になったアロンソはこれまでに32勝、22ポールポジション、97回の表彰台に上がり、現役最強ドライバーとの呼声をほしいままにしてきた。3度目のF1タイトル獲得が再優先事項と公言してきたものの、所属チームのマクラーレンは低迷。トップチームのシートにも空きがない状況となり、難しい選択を迫られていた。

アロンソは世界3大レース制覇を目標に掲げており、すでにF1モナコGPとルマンの2冠を達成。米インディカー・シリーズの一戦として開催されているインディ500を残すのみとなっており、来季はインディカーへの参戦が予想されており、近い内に正式な発表がなされるものと思われる。

なお、マクラーレンの発表においては「アロンソは2019年シーズンのF1を走らない」とされており、また、アロンソ当人も「チームが将来、力強くカムバックする事を信じているし、そうなった時は、F1に戻ってくる事もあるかもしれない。そうなれば本当に嬉しい」と述べ、2020年以降のF1復帰に含みを残している。

とは言え、世界3大レースの中で最も攻略が難しいのはインディアナポリス500。F1においては良いマシンを手に入れ予選で結果を残せば高確率でウィナーの称号が手に入るが、インディ500の場合は耐久レースとスプリントレースの両方の性質を備えている事に加え、F1と比べればマシンは事実上ワンメイク。体力とオーバルでのドライビングテクニック、そして運の3つが揃わぬ限り栄光を手にすることは難しい。19年の挑戦だけで勝利の美酒が味わえる程容易いレースでないのはアロンソ自身がよく分かっている。

アロンソの引き止めに奔走したザク・ブラウンCEOにとっては、マーケティングとチャンピオンシップの両面で欠かすことの出来ないアロンソを失うという実に厳しい現実に直面する事となったが「アロンソはF1を代表する傑出したレジェンド」であると述べ、チームへの貢献に感謝の意を表した。

電撃引退発表はサマーブレイク真っ只中に行われる事となったが、アロンソは数ヶ月前に既に今回の決断を決意。史上稀に見る才能の引退に危機感を募らせたF1は、CEOのチェイス・ケアリーが直々にアロンソを説得。残留に向けて各方面に働きかけを行ったが、アロンソの意志が変わる事はなかった。

引退発表コメント

フェルナンド・アロンソ

僕はF1というスポーツの中で、17年という素晴らしい月日を過ごしてきた。そして今、次の挑戦に向けて歩みを進めるべき時が来た。僕はこれまでの毎シーズンのあらゆる瞬間を楽しんできた。F1での時間を特別なものにしてくれた全ての人々にありがとうを伝えたいところだが、幾ら感謝しても感謝しきれるものじゃない。

まだ今シーズンの戦いは終わっていない。残されたグランプリでは、これまで以上の情熱と決意を以て挑むつもりだ。

今後の事については様子を見てみよう。新しいエキサイティングなチャレンジが間近に迫っている。僕は今、これまでの人生の中で一番幸せな時間を過ごしているけど、新しいアドベンチャーを追い求めなきゃならない。

マクラーレンのみんなに感謝している。僕の心はこれからもずっと彼らと共にある。チームが将来、力強くカムバックする事を信じているし、そうなった時は、F1に戻ってくる事もあるかもしれない。そうなれば本当に嬉しい。

マクラーレンでは本当に素晴らしい人達と多くの関係を築く事ができた。彼らは僕の知見を広げてくれ、他のカテゴリーで僕がレースをするチャンスをくれた。僕は今、これまで以上に自分の競争力に自信を持っている。

今回の決断は数ヶ月前にすでに決めていたもので、断固たる決意を以て下したものだ。にもかかわらず、チェイス・ケアリー(F1のCEO)やリバティ・メディア(F1オーナー企業)の人々は僕の決心を変えようと様々な努力をしてくれた。他にも、決断を下してから色んな人達から連絡をもらった。その事にお礼を言いたい。

最後になるけど、かつて所属していたチームやチームメイト、ライバル、同僚、パートナー、ジャーナリスト等、僕のF1でのキャリアを通じて共に仕事をした全ての人々と何より世界中の僕のファンに感謝の気持ちを伝えたい。将来、この関係が再び交わる事を強く信じている。

ザク・ブラウンマクラーレンCEO

フェルナンドは、マクラーレンのみならずF1を代表する傑出した存在だった。同世代のドライバーの中でずば抜けた才能を持ち、偉大なF1ドライバーであり続けた。彼が身を置いた17年という年月は、F1の歴史を一層素晴らしいものとした。

誰にでも変化が必要な時というものがあり、フェルナンドにとっては今シーズン末がその時だった。現在の彼がキャリア絶頂期にある事を信じて疑わないが、それでもなおこのスポーツを離れるという彼の決断を尊重している。率直な話し合いの場を持ち、最終的にこのような結論に至る事となった。

この数カ月はフェルナンドの今後について評価してきたが、その間も彼の競争力が衰える事はなかった。常に最高レベルのパフォーマンスを発揮し続けてきたし、この後に控える9戦を残した今年のチャンピオンシップでも、その才能を披露してくれるはずだ。

フェルナンドはマクラーレンに多大な貢献をしてくれた。これについて異論を持つチームスタッフは一人もいない。マクラーレンにとってもF1にとっても彼はレジェンドなのだ。フェルナンドはマクラーレンが紡いできた歴史の中で重要な役割を担い、輝かしいドライバーの1人として名を残す事になる。シェイク・モハメドCEOや大株主のマンスール・オジェら役員全員を代表し、フェルナンドの今後の活躍を祈っている。

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