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ICEとは、燃料を燃やして動力を得るエネルギー発生装置の事で、一般にエンジンと呼ばれている。ICEはInternal Combustion Engine(インターナル・コンバッション・エンジン)の略であり、直訳すると内部燃焼機関となる。

F1においては旧来の2.4リッター自然吸気エンジンに取って代わり、熱エネルギーと運動エネルギーを改正するハイブリッドシステムを組み合わせた1.6リッターV6ターボエンジンが2014年に導入された。

これは旧来のNAエンジンとは異なる総合的エネルギー供給システムであり、これをエンジンと呼称するには実態とかけ離れてしまうため、以降は内燃エンジン単体を指して「ICE」と呼び、ICEを含めたシステム全体をF1パワーユニットと呼ぶようになった。

ICEの仕様

ICEの仕様はレギュレーションによって厳格に制限されている。レシプロピストンによる4ストロークのみが認められ、6気筒全てが同じ容量の90度V型であり、かつ、各シリンダーの正常断面形状は真円である事と定められている。

2013年までF1で使われていたV8エンジンは18,000回転/分に制限されていたのに対し、14年以降のICEは15,000回転/分と回転数が抑えられている。また、車体の駆動装置はICEとMGU-Kの各一基に制限される。

排気量
1.6リットル
最大回転数
15,000rpm
バンク角
90度
気筒数
6気筒
最大燃料流量
100kg/時
最小重量
145kg

吸気から排気まで~ICEの燃焼プロセス

ICEは燃料と空気の混合気に点火してクルマを駆動するためのエネルギーを取り出す。その原理は市販車のエンジンとほぼ同じだが、F1の場合はターボチャージャーが絡むため少しばかり複雑である。

燃焼用の空気はコックピット後方上部にあるエアダクトを通ってエンジンへと送り込まれる。これはターボチャージャーを構成するコンプレッサーで圧縮されるが、これと同時に圧縮によって空気の温度が上がってしまうため、プレナムチャンバー(エンジンに送り込む前に一時的に空気を溜めておく容器)に送る前に、チャージクーラー(インタークーラー)を使って冷却する。後述のように空気の圧縮には排気ガスの力を利用する。

冷やされた空気はその後、6つのインレットポートで分岐され、2つのバルブを通してシリンダー内部へと送られる。F1エンジンは現代のロードカーの多くと同じ様に直噴式であるため、燃料は燃焼室に直接噴射される。

燃料の噴射圧はレギュレーションによって最大500バールに制限されている。一般車の直噴ガソリンエンジンは最大でも概ね350バール程度だが、ディーゼルエンジンは最大2500バール程度に達する事もあるため、これは飛び抜けて高い値でもない。

空気と燃料の混合物はピストンによって圧縮された後、点火プラグによって爆発。このエネルギーで、コネクティングロッドを介してクランクシャフトと接続されたピストンが押し下げられ、クランクシャフト(ピストンの往復運動を回転運動に変える装置)を駆動する。

ピストンが一往復して戻ってくると、今度は排気バルブが開き、シリンダー内部から排気ガスが放出される。排気ガスはターボチャージャーのタービンを駆動するために使用され、これによってコンプレッサーを稼働させる。

コンプレッサーの稼働に必要ない分の排気ガスは、タービンへの流入量を調節するバルブ機構、通称ウェイストゲートを通して分岐され、車体後部のテールパイプから排出される。

パワーユニット開発の目玉

もう一つの動力源であるMGU-Kの最大出力が120kWに制限されているため、パワーユニット全体の総出力を向上させるためには、ICEの開発が欠かせない。他のマニュファクチャラーに遅れる形で2015年にハイブリッドターボ時代のF1に参入したホンダは、ライバルキャッチアップのための主軸をICEの改良に定め開発を行ってきた。

2019年現在、各マニュファクチャラーのICE単体での出力は概ね850馬力程度と考えられており、熱効率は50%を超えている