降って湧いたF1スキッド規定騒動:変更を余儀なくされたチームとその影響、FIAへの批判の声
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国際自動車連盟(FIA)はF1ラスベガスGPを前に新たな技術指令(TD)を発行し、スキッドブロックに関するルールの抜け穴を塞いだ。
この突然の決定により、クルマの変更を余儀なくされたのはどのチームなのか? パフォーマンスへの影響はどの程度あるのだろうか?
問題の背景:プランク規定の抜け穴と悪用
現行のグラウンドエフェクトカーから最大限のパフォーマンスを引き出す上での一番の課題は、「プランクが路面と接触して過度に摩耗しない範囲で、どれだけ車高を低く設定できるか」という点にある。
F1チームは、ダウンフォースを最大限に引き出すべく、車両をできるだけ地面に近づけるアプローチを採るが、車両底部に取り付けられたプランクが過度に摩耗すると、違反車両と見なされ失格となる。
プランクの摩耗は、フロアの前方と後方(コックピットの後方下部)、そしてフロア中央(フロアフェンスの下部付近)の左右2箇所の計4箇所でチェックされる。それらの部分には、失格の基準となる1mm以上の摩耗が発生しないよう、金属製のスキッドブロックを取り付けることが認められている。
昨年発行されたTDにより、これとは別に、後方測定ポイント近くに補助用のプレートを取り付けることが可能となった。
補助用プレートに関しては、その厚みに関する具体的な規定が存在せず、これを悪用し、車高を下げながらも測定ポイントの摩耗を防ぐ手法が生み出された。
レッドブルからの申し立てを受けFIAは、ラスベガスGPを前に新たなTDを発行して問題を是正した。
利益を得ていたのは6チームか
この抜け穴を利用してパフォーマンスを向上させていたと考えられているのは、フェラーリ、メルセデス、アルピーヌ、ハース、そしてザウバーであるが、FIAに問題を提起したレッドブル自身もまた、アドバンテージを得ていたとされる。
自らに不利益となるにも拘らず、なぜレッドブルは本件を公にしたのか?
それは、自分たち以上にライバル(フェラーリ)の方がグレーゾーンをよりアグレッシブに利用していたため、抜け穴が塞がれた際に生じるダメージが大きいとみなしたためと考えられている。
新たなTDを受け、メルセデスとアルピーヌはフロアに変更を加えたことを認めた。
フェラーリのフレデリック・バスール代表は「この件で争うべきではないと判断した。選手権に集中したい。確かに変更を加える必要があったが、FIAからは我々のプランクが合法であるとの確認を以前に受けていた」と語り、こちらも変更を余儀なくされたと認めた。
RBのレーシング・ディレクターを務めるアラン・パーメインは、自分たちは新しいTDの影響を受けていないが、ハースとアルピーヌは変更を余儀なくされた可能性があると示唆した。
規制強化による影響
フェラーリのシニア・パフォーマンス・エンジニアリング・ディレクターを務めるジョック・クリアやメルセデスのトト・ウォルフ代表は「大きな問題ではない」と軽視した。
しかしながら、抜け穴を悪用していたとするならば、補助プレートの撤去により摩耗のリスクが高まるのは必然で、少なからず車高を引き上げなければならなくなる。
例えば、ラスベガスのようなサーキットでは、車高を低く保つことがストレートでの空気抵抗軽減や低速コーナーでの性能に寄与するが、影響の度合いは翌戦のカタールGPの方が大きいかもしれない。
ロサイル・インターナショナル・サーキットは高いダウンフォースが求められるコースであるため、より顕著な影響を及ぼす可能性が指摘されている。
突然の変更に対する批判
最も大きな影響を受けると考えられているのはフェラーリだが、バスールはTDの発行のタイミングを巡ってFIAを批判した。
フェラーリはFIAに対し、ラスベガスの1週間後に予定されているカタールGP以降への延期を求めたが、この提案は認められなかった。
バスールは「何より驚いたのは、金曜日の夜に技術指令が発行され、それから2日以内に対策を講じなければならなかった点だ。2年に渡って同じプランクを使い、その設計図をFIAに提出しているのに、これは厳しすぎる」と語った。