サインツ「見られずに済んだけど」ブラピのおかげ? 涙を隠し挑んだフェラーリとの最終戦―感傷と競争心の狭間

ラストレースを経てチームメンバーとの別れを惜しみ目頭を抑えるカルロス・サインツ(フェラーリ)、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

フェラーリを逆転のタイトルに導くには至らなかったが、 カルロス・サインツは2024年F1最終戦アブダビGPで2位表彰台を獲得し、スクーデリア・フェラーリでの4年間に幕を下ろした。レース後、「感傷的」になったと認め、それが誰にも気づかれなかったのは「ブラピの演技指導」の賜物だと冗談を飛ばした。

サインツは2024年シーズンの開始を前に、ルイス・ハミルトンの加入によりフェラーリのシートを失った。タイミングが悪く、その実力にも拘らず、競争力が期待できるシートを獲得するチャンスはなかった。浪人生活を余儀なくされる可能性もあったが、今年、ランキング9位で終えたウィリアムズと契約する道を選んだ。

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表彰台の上でチームメイトのシャルル・ルクレール(3位)と健闘を称え合うカルロス・サインツ(フェラーリ)2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

サインツはマラネッロのチームで過ごした4年間を「誇りに思う」とする一方、「特にこの1年は、もっと誇らしく感じている」と語った。

「この1年は、モチベーションを維持し、決意を貫き、そして24戦をこなすために、シーズンを通して全力を尽くし、時に落ち込み過ぎないように気をつけたりと、精神的に本当に厳しい1年だったと思う」

「シーズン末にチームを離れることになるドライバーにとって、年間を通して集中力とモチベーションを維持することが容易でないことは、誰もが目にしていたと思う」

「でも僕はそれをやり遂げた。こうしてシーズンを終えて感じているのは、そういうことだ」

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フェラーリでのラストレースで2位表彰台を獲得し、チームメンバーと喜び合うカルロス・サインツ、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット) (1)

感傷的になって当然の週末に、全くそのような素振りが見られないことについて尋ねられると、「君らが知らないだけさ。もしかしたら、僕はすでに涙を流しているかもしれないし、みんなが気づいていないだけかもしれないだろ!」と笑った。

「それがヘルメットを被った状況でのことだったのか、レース開始10分前のクルマの中でのことだったのか、インラップ中だったのか。それは君らには分からないだろう」

涙を見せない理由について、サインツは冗談交じりに「今週末、ここに来ていたブラッド・ピットから演技のコツを学んだんだ」と答えた。ハリウッド俳優のピットは、2025年6月27日公開の映画「F1」の撮影のために最終戦の地を訪れていた。

「感情的な瞬間があったのは事実だけど、それがいつ、どんな時だったかは内緒だ。それは僕自身とチームとの間のことだからね」とサインツは語る。

「言っておくけど、感情的になる瞬間はあった。ただ、やるべき仕事が多すぎた。つまり、勝利やタイトルをチームにもたらすことに集中していて、感情に浸る余裕なんてなかったんだ。つまり、競争心が感情を凌駕していたってことだ」

「でも、今日は感情が込み上げてくる瞬間がいくつかあった。幸運なことに、君らには見られずに済んだけどね」

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ラストレースを経てシャルル・ルクレールとの別れを惜しむカルロス・サインツ(フェラーリ)、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

レースを終えて、SF-24から降りた時の心境については「不思議な感覚だった。少し感傷的になったのは否定しない」と振り返った。

「たぶん、もっと感情が高まったのは、グリッドでクルマに乗り込んだ最後の瞬間だったと思う。この素晴らしい4年間を過ごした仲間たちとの最後のレースになると分かっていたからね。そして、おそらくフェラーリのマシンに乗るのもこれが最後だと思うと、本当に感慨深かった」

「できるだけレースを楽しもうと自分自身に言い聞かせ、チームのために全力を尽くそうと心に決めた。そしてレースを終えてクルマを降りた時に広がったのは、甘くも苦いという複雑な気持ちだった」

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ラストレースを経てチームメンバーとの別れを惜しむカルロス・サインツ(フェラーリ)、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

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レースエンジニアのリカルド・アダーミとカルロス・サインツ(フェラーリ)、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

サインツはレース終了後もアブダビに滞在し、9日(月)にはフィルミングデーを利用してウィリアムズを走らせ、10日(火)のポストシーズンテストにはウィリアムズから参加する。レース終盤にはすでに、次のキャリアに意識が向かっていたとサインツは明かす。

「正直に言うと、最後の数周、チームのために全力でプッシュしていたけど、クルマの中でいろいろと感じるものがあって、それで自分にこう言い聞かせていた。『この感触を覚えておけ。明日と火曜には、このコーナーでどうしてこのクルマが速いのか、なぜこんなに感触が良いのかを思い出す必要があるからだ』ってね」

「要は、僕はすでに未来にも目を向けていて、これからの挑戦を本当に楽しみにしてるってことだ。今日は赤色を身にまとう最後の1日だから、チームのみんなと目一杯、楽しむつもりだ。マラネッロではまだあと数日過ごすことになるけど、僕のレーシングスピリットはすでに月曜と火曜に向かっていて、ウィリアムズのクルマをどう速くできるかを考え始めている」

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フェラーリSF-24をドライブするカルロス・サインツ、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

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自身のチームとの記念撮影に臨むカルロス・サインツ(フェラーリ)、2024年12月8日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)


2024年F1最終第24戦アブダビGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを飾り、マクラーレンに26年ぶりのコンストラクターズ選手権をもたらした。

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