ピットボックス前
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ボックス

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ボックス(英:box)とは、ピットインを指示する隠語(業界用語)で、レース中にレースエンジニアがドライバーにピットストップを行うよう指示する際などに使われる。

「Box」はピットガレージ前にあるマシンの停車スペース(白線または黄線で描かれた四角形の枠内)=ピットボックスの事を指す名詞で、ピットストップを意味するドイツ語の「Boxenstop」に由来しているものと広く考えられている。

「Box this lap(この周でピットに入れ)」といった具合に使われ、エンジニアからの無線が入るとドライバーはその周の終わりにピットインを行う。

ランド・ノリスのタイヤ交換を行うマクラーレンのピットクルー、2021年9月26日F1ロシアGP決勝レースにてCourtesy Of McLaren

ランド・ノリスのタイヤ交換を行うマクラーレンのピットクルー、2021年9月26日F1ロシアGP決勝レースにて

何故「ピット」ではなく「ボックス」を使うのか?

F1、特にレース中のチーム無線で「ピットストップ」が使われる事は殆どなく、レースエンジニアとドライバーは「ボックス」を使ってコミュニケーションを取る。何故「ピット」は使われないのか?

実はこれ、正確な理由はよく分かっていないのだが、一般化した理由は想像が付く。それはピットストップがレースリザルトを決定付ける重要なレース戦略であり、聞き間違えや聞き逃しが許されないためだ。

「Pit」のように子音+母音の一語で構成される単語の場合、何らかの理由で子音が聞き取れないと、何を指しているのかを読み解くための手がかりがなくなってしまう。

軍隊には「A」を「アルファ」、「B」を「ブラボー」等と呼称するフォネティックコードがあるが、これも同様の理由に依る。

F1のレースエンジニア、ドライバーの出身地は本国イギリスだけでなく、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなど世界各国に渡る。そしてレース中は不安定な無線を通してエンジン音が唸る中で、外国人とて基本英語で意思疎通を行わなければならない。こうした状況において確実に情報を伝達させるために「ボックス」が用いられているというわけだ。

Box Box Box

2015年までメルセデス、ニコ・ロズベルグの担当エンジニアだったトニー・ロスは“Box Box Box“と、毎回3秒くらいかけてゆっくりはっきり伝えていた。耳に残るそのフレーズは、国際映像でもよく流されていた。

このように複数回繰り返してピットインを指示するのが一般的だ。