2021年型アストンマーチンF1マシン「AMR21」スタジオショット細部ーフロントウイング
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

フロントウイング

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フロントウイング(英:front wing)とは、レーシングカーのノーズ先端に位置する左右に広がる大型のエアロパーツの事を指す。

カーボンファイバー製で重量は約10kgほどであるものの、その100倍のダウンフォースを発生させる事ができる。

フロントウイングの役割

車体を構成するあらゆるパーツの中で前方からの気流に触れる最初のパーツであり、それ単体でダウンフォースを生み出すというよりもむしろ、以降のパーツ全てに影響を与えるという意味で非常に重要なエアロパーツだ。

  • ダウンフォースを生成する
  • 後方に向かう空気の制御
  • 前輪が発生させる乱流を車体の外側に追いやる

また、高速回転する前輪から生まれる乱流を車体の外側に追いやるのも翼端板を含めたフロントウイングの役割だ。この乱流は前輪以後のエアロダイナミクスに悪影響を与える。

フロントウイングの構成

フロントウイングは大きく分けて、メインプレーンと呼ばれる主翼と数枚のフラップ(可動翼)、そして左右の端に垂直に立つ翼端板(エンドプレート)で構成される。

メインプレーンはフロント側のダウンフォースの大部分を生み出すパーツで、その角度は固定されているが、フラップは角度を調整できるよう作られており、ダウンフォースレベルを変更する事ができる。レギュレーションでは調整可能なものを「FWフラップ」と定義している。

フロントウイングの調整方法

レギュレーションにもよるが、総ダウンフォースの約3割はフロントウイングによって生成されるとされる。

どのようにダウンフォースを発生させるか?

メインプレーンとフラップを含めたウイング全体を一つのパーツとして見ると、そのフォルムは飛行機の翼を逆にしたような形状(底面の方が車体後方に向かって大きく湾曲)で、それにより路面とウイングとの間に負圧を生み出し、これによりダウンフォースが発生する仕組みとなっている。

レッドブル・ホンダRB15とフェラーリSF90のフロントウイング比較copyright Formula1 Data

レッドブル・ホンダRB15とフェラーリSF90のフロントウイング比較

同じウイングと名のつくリアウイングよりも役割と機能の両面で重要であるため、より頻繁にアップデートされる。

Y250ボルテックスとは?

2009年から2021年までF1のフロントウイングは、中心線から左右250mmの範囲を空力的にニュートラルな部分としなければならなかった。要はこのエリアにウイングを設けるのは規定違反だったわけだ。

すると誰もが250mmのポイントを起点に外側に向かってウイングを設ける事になる。ニュートラルな中央部分とその外側のダウンフォースを生み出す部分との堺、つまり250mm地点には「ボルテックス」と呼ばれる小さな竜巻のような渦が後方に向かって螺旋状に流れていく。

これが所謂「Y250ボルテックス」で、車両のセンターラインからの距離がその名の由来となった。

チームはY250ボルテックスを使用してアンダーフロアに気流を流し込んでいた。同時にこれは車体後方にダーティーエアをもたらすものであったため、接近戦の促進を狙う2022年のF1レギュレーションによって根絶された。

F1技術解説:初心者向け空力学