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デプロイメント

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デプロイメントとは、回生したエネルギーを実際に発動・使用すること、あるいは回生(回収)したエネルギーそのもののことを指す。

2014年以降、F1マシンの動力は旧来の自然吸気エンジンからパワーユニットへと変貌を遂げた。最新のF1マシンは、1.6リッターV6ターボエンジンとモーターの2つの動力源を持っており、この内モーターはエネルギー回生システム「ERS」から供給されるエネルギーによって作動する。ERSは、マシンが発する熱や運動エネルギーなどを回収する役割を持っており、回生したエネルギーは一旦バッテリーに蓄えられる。このバッテリーに蓄えられたエネルギーを使用することをデプロイ、あるいはデプロイメントと呼ぶ。

2つの回生システム

ERSは、以下の2種類のエネルギー回生システムから構成されている。

  • 運動エネルギー回生システム(MGU-K)
  • 熱エネルギー回生システム(MGU-H)

運動エネルギーを回生するMGU-Kはブレーキング時に発生する運動エネルギーを、そして熱エネルギーを回生するMGU-Hは排気ガスの熱エネルギーを回生し再利用する。

MGU-Kの最大出力は161馬力に制限されているが、MGU-Hには上限規制がない。そのため如何にMGU-Hの性能を高められるかが重要であり、MGU-Hの性能がそのままパワーユニットの性能に直結するという側面がある。

デプロイメントの実際

チームは決勝レースに先立って、どの区間でどの程度のデプロイメントを行うかについて予め検討し決定する。通常デプロイメントは直線区間、つまりストレート上で行われることが多いが、実際には決勝で自チームマシンの前後を走行しそうなライバルチームのマシン特性や、ピットストップ戦略、サーキットのコースレイアウト等を加味して決定される。

デプロイメントはドライバーが手動でON/OFFを操作するのではなく、ECUによるエンジンマッピングによって自動的に行われる。その為、通常ドライバーがデプロイメントを意識することはないが、ソフトウェアの問題などによって適切にデプロイメントが行われない時に備えて、ドライバーが手動でデプロイメントをコントロールできるようにもなっている。2017年のF1中国GP決勝レースでは、キミ・ライコネンのマシンにこの問題が発生。ライコネンは手動で操作する必要に迫られた。

ホンダのデプロイメント問題

マクラーレンにパワーユニットを供給しているホンダは、2015年中盤頃までデプロイメントに問題を抱えていると言われていた。これはホンダが他チームに比べてMGU-Hを小型化したことに由来する。マクラーレン・ホンダが目指していた”サイズゼロ”と呼ばれるコンパクトなマシンを実現するためには、エンジンのVバンク内にターボチャージャーとMGU-Hを設置する必要があったため、MGU-Hの性能を犠牲にすることになったのだ。

mgu-h
©mercedesamgf1.com メルセデスのMGU-H

MGU-Hの性能が犠牲になれば、その分1周あたりの使用可能な回生エネルギーの量が減ってしまう。そのため、ホンダのパワーユニットは周回途中で早々にデプロイメントが枯渇してしまっていたのだ。誤解を恐れずに言えば、マクラーレンが提案したサイズゼロのコンセプト自体が敗北の原因であったとも言える。

先に述べたようにMGU-Hの性能こそがパワーユニットの性能を規定するようになってきたため、後にホンダはこのエンジンレイアウト捨てMGU-Hを大型化している。