フルウェットタイヤを履くマクラーレンMCL33、2018年F1フランスGP
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マクラーレンF1に批判殺到…ファンの不満爆発「遅いのはホンダのせいじゃなかった…騙された」

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マクラーレンF1チームにファンからの批判が集中している。かつて栄華を誇った英国の名門チームはフランスGP予選で失態をさらけ出し、フェルナンド・アロンソが16番手、ストフェル・バンドーンが18番手と2台揃ってQ1敗退を喫した。バンドーンが辛うじて上回ったのは、ロバート・クビサをして「グリッドで最悪のクルマ」と評価するウィリアムズの2台のみ。決勝でもノーポイントに終わり、惨憺たる結果となった。

マクラーレンは毎戦、チーム公式Twitterを通じて各セッションの結果を投稿しているが、23日土曜の予選結果報告のツイートに世界中のファンからの批判が殺到。僅か30分ほどの間に500件以上のリプライが飛んだ。中には「フェルナンドとストフェルにとっては厳しい予選だったね。レースでの挽回を祈ってる」といった応援のメッセージもあるが、9割以上は不満を募らせたファンからのバッシングであった。

あるユーザーは「エリック・ブーリエ代表は恥ってものを知らないのか?奴はマクラーレンとフェルナンドのキャリアをぶち壊してる。彼がクビになるまで応援するのは辞めるよ」とコメントし、多くのファンがこれに共感。このツイートに対して他のユーザーは「いやいや、酷いのはエリックだけじゃない。空力部門も絶望的だ…。でも広報部だけは極めて優秀だね。何しろ長い間、僕らにこのガラクタのようなチームを信じさせてきたんだから」と返した。

マクラーレンF1公式Twitterアカウントに寄せられた批判的なメッセージ

チームを糾弾する声は、地元イギリスのファンだけなくアロンソの母国スペインを含めた世界各国に及ぶ。昨年までは、不甲斐ないリザルトに対する非難はすべてホンダに集中していたが、今や状況は完全に一転。マクラーレンは、成績不振の責任の全てをホンダに転嫁してきたこれまでのツケを支払う形となっている。

「ホンダが問題だって言ってたよね…?」「この結果は、過去三年の残念なパフォーマンスがホンダだけのせいじゃなかったって事を示してる。マクラーレンと同じエンジンを積みながら、マックス・フェルスタッペンは1.5秒も速いんだぞ!」「GP2マシンですらない。マクラーレンのマシンはGP3レベルだ。何て有様だよ」「いやいや、ゴーカートだろ」

MCL32の整備にあたるマクラーレンのメカニック
© Honda Racing、マクラーレン・ホンダのマシンMCL32

マクラーレンの上級管理職は昨年、定期的にホンダ批判を繰り返し、両者の関係が修復不可能であること、そしてライバルに大きく遅れを取っているのはホンダエンジンが元凶であると印象づけた。元F1ドライバーのステファン・ヨハンソンもこれに同調「マクラーレンがホンダを見限って別のエンジンを積んでいたら、彼らが優勝候補の最前線にいたであろうことは明らかだ」と述べ、これを後押しした。

チーム上層部やエースドライバーであるフェルナンド・アロンソは、再三に渡って自社製シャシーの戦闘力の高さをアピール。レッドブルと同等レベル、時にはグリッド最強とまで喧伝してきたが、ホンダとの契約を解消しルノーエンジンを搭載したことで、これまでの主張が公に裁かれ始めている。フランスGP予選では、ルノーエンジン勢Q1最速のフェルスタッペンとアロンソとのギャップは1.5秒と大きく開き、車体側の性能不足が露呈。アロンソは「単純にマシンが遅い」と肩を落とした。

マクラーレンが最後にF1のポディウムに上がったのは2014年の開幕オーストラリアGP。2013年以降は1勝も出来ていない。かつて賞賛と羨望の眼差しを集めた英国の名門チームの凋落は、ホンダと手を組む前から既に始まっていた。

批判や疑問はシーズン序盤から散見されていた。レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるDr.ヘルムート・マルコは今年初め、アロンソとマクラーレンに足を引っ張られた事でホンダは妥協を強いられていたと発言。元F1テクニカル・ディレクターのマイク・ガスコインはシーズン前テストの結果を受け、決別の判断に疑問を呈した

2018年F1バーレーンGPで4位入賞し、胴上げされるトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー
© Getty Images / Red Bull Content Pool、4位入賞し、胴上げされるピエール・ガスリー

潮目が変わったのは第2戦バーレーンGP。ホンダエンジンを搭載するトロロッソの新人ピエール・ガスリーが、チーム結成2戦目にして4位入賞を果たした事で、マクラーレンに対する風向きが大きく変わった。そして前戦カナダGP、英国出身の元F1ドライバー、ジョリオン・パーマーがホンダと決別したマクラーレンを痛烈批判「高い金を払って恥を晒しただけ」と述べ波紋を呼んだ。

逆風の土壌が徐々に形成される中、フランスGP開催直前に報じられた内紛疑惑がこれを一気に加速させた。英国メディアがマクラーレンの職場環境の悪質さを訴える内部告発記事を掲載。チーム内には、ザク・ブラウンCEOやブーリエら首脳陣の手腕に対する不満が高まっていると報じた。

一つのワークスチームとして活動していた以上、エンジンと車体とを別個に取り出し責任の所在を問うのはナンセンスであり、3年間に渡る第二期マクラーレン・ホンダ時代の成績不振の責任は、まさに「マクラーレン・ホンダ」自体にあったという他にない。ホンダが信頼性不足で足を引っ張っていたのは間違いないが、マクラーレン側の車体が流布されていたほど優れていなかったのもまた事実であった。

マクラーレンというチームを心から愛し、その言葉を信じて声援を送り続けてきたファンからすれば、裏切られたと感じるのも無理はない。ファンにとっては勿論だが、マクラーレンにとってもホンダにとってもこの状況は不幸と言わざるを得ない。ポディウムをかけてバトルを繰り広げるマクラーレンとホンダ…そんなシーンがF1を席巻する時代が来ることを願いたい。

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