2台同時にオーバーテイクされてしまったマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ
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2017年F1はオーバーテイクが”3.6倍”難しい – オーストラリアGP分析

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2017年F1開幕戦オーストラリアGPを終えたドライバー達が口々に「今年のオーバーテイクは難しい」「不可能だ」との声を上げているが、果たして本当にオーバーテイクは難しくなったのだろうか?

オーバーテイク王「接近して走れない」

昨年最も多くのオーバーテイクを決めたレッドブルのマックス・フェルスタッペンは、オーストラリアGPの決勝レースで、終始フェラーリのキミ・ライコネンを追う展開を余儀なくされていた。フェルスタッペンはレース後のインタビューで「タービュランスのせいでキミをオーバーテイクできなかった。前のマシンに接近して走行するのは難しかったよ。2秒以内のレンジに入った瞬間にそれを感じるんだ。」とコメント。

フォース・インディアのエステバン・オコンやルノーのニコ・ヒュルケンベルグも、レース後に同様のコメントをしている。

オーバーテイクが困難な理由

オーバーテイク
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もとより、オーバーテイク回数が減ることついての懸念は以前から指摘されていた。2017年のF1レギュレーション大改革によって、マシンはダウンフォース量の増加(30%程度)と、幅広タイヤによる強力なブレーキ能力を手に入れている。これらのことは、以下のような”弊害”をもたらすとされる。

  • ダウンフォース増加により、コーナーリング中にタービュランスが発生するため先行マシンに追従するのが困難になる
  • 幅広タイヤにより、ブレーキングポイントを遅らせることができるため、ディフェンスしやすくなる

なるほど、確かにこれはドライバーの意見とも合致するし、そう言われると「その通りだよね!」と思わず頷いてしまう。

昨年より3.6倍難しいオーバーテイク

さて、ここまで今年のオーバーテイクの困難さについて、ドライバーの発言などを引用し紹介してきたが、これらはあくまでも”主観”であり”意見”に過ぎない。そう、”ただの思いこみ”って可能性もあるではないか。そこで、本当にオーバーテイクが難しくなったのかどうかを、今年と昨年のオーストラリアGPのオーバーテイク回数で比較してみることにした。数字はウソをつかないし、我々素人にも分かりやすい。

  • 2016年…50回 (内15回がDRS)
  • 2017年…14回 (内3回がDRS)

結果はご覧の通り、昨年が50回だったのに対して今年は14回にとどまっている。つまり「オーバーテイクは去年より3.6倍難しい」ということだ。全57周で14回しかオーバーテイクがないということは、平均して3.5周に1度しか追い抜きが見られなかったということである。幸いにも、昨年も今年も気温・路面温度・天候ともにほぼ同じコンディションであるため、検証サンプルとしては申し分ない。

とは言え、昔は平均10回~20回

ちなみに、2011年シーズンを通しての1戦あたりの平均オーバーテイク回数は約60回であるため、如何に今年のオーストラリアGPでのオーバーテイクが少なかったかがよく分かる。しかし同様の数値を2005年で見てみると約13回であるため、2005年と比較すると「ちょっとオーバーテイクしやすくなったよね」となってしまうのも事実だ。そもそも90年代中盤から2010年にかけては、1戦あたり大体10回から20回程度のオーバーテイクしかなく、DRSが導入された2011年以降急激にオーバーテイク回数が増加したのだ。

結論 : 去年よりは難しい、だが2000年代とはほぼ同じ

無論まだ初戦を終えたばかりであり、結論もヘッタクレもないのは承知だが、敢えて結論を出すならば「今年はオーバーテイクすんのすげームズいっす」となる。ただし、シーズンが進むにつれて、また、特定のサーキットにおいては数多くのオーバーテイクが見られると主張する某レッドブル・レーシングの意見もある。最後にレッドブルのコメントを紹介して終わりとしよう。

2017シーズンは先へ進むにつれてラップタイムの短縮率が上がり、レースでのオーバーテイクの機会も増加するだろう。特に、バーレーン・インターナショナル・サーキット、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ、セパン、ヤス・マリーナ・サーキットなどのコース幅の広いモダンサーキットでは、数多くのオーバーテイクが期待できる。via : F1:2017シーズン新レギュレーション解説 | Motorsports