F1アブダビGP2016《決勝》結果とダイジェストcopyright formula1-data.com

F1アブダビGP2016《決勝》結果とダイジェスト

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ワールドチャンピオンタイトル決定戦となった2016年F1アブダビGP決勝。ニコ・ロズベルグが自身初のF1ワールドチャンピオンに輝き、史上2組目の親子二代でのワールドチャンピオンの誕生となった。

レース自体は、逆転を狙うハミルトンのポール・トゥ・ウィンとなったが、ロズベルグが2番手表彰台となりその望みは打ち砕かれた。

2016年アブダビGP決勝順位
©@F1

動画で見るアブダビGP決勝レース

2016年アブダビGP決勝レース動画

レースハイライト

終始ペースコントロールのハミルトン

レースが終わってみれば5位ダニエル・リカルドのトップとのタイム差が5秒3ほど。一見異様なまでの接戦に見えるが実はそうではない。ポールスタートのハミルトンは、スタートをうまく決め一度も順位を落とすことなくレースを先導したわけだが、レース開始早々から終始ペースをコントロールしていたのだ。

ハミルトンが逆転タイトルを手にするためには、彼自身が1位でチェッカーフラッグを受けるだけでは不十分で、ハミルトンが1位の場合ロズベルグは4位以下である必要があった。ここ3シーズン圧倒的な速さを見せつけたメルセデスのマシンを駆るロズベルグが4位以下になるなど、接触などのアクシデントなくして可能性はほぼゼロ。そのことをハミルトンは嫌というほど分かっていた。

決勝の舞台は抜けそうで抜けないヤス・マリーナ・サーキット。ともすれば、ハミルトンは2位を走行するロズベルグをDRSが使える1秒以内に入れさせない程度にペースを落とすことでロズベルグのペースをコントロールし、その間に後続のマシンがロズベルグを抜いてくれることを期待していたのだ。

無線でハミルトンにペースを上げるよう指示するパディーロウ
©@F1

そのあまりに露骨なペースコントロールに、このままでは2台ともが下位に沈むことを懸念したメルセデス陣営は再三に渡りハミルトンにペースを上げるよう指示するもハミルトンはこれを無視。堪りかねたエグゼクティブディレクターであるパディー・ロウが直々に無線でハミルトンに対し「ペースが遅すぎる。もっとペースを上げろ。これは命令だ。」とまくし立てる一幕も。それに対しハミルトンは「今ボクはレースをリードしている。何の問題もないよ」「このままじゃタイトルが取れない。タイトルが取れないんだったらどうなったって構わない」と最後まで指示を聞き入れることはなかった。

ハミルトンの気持ちは誰もが理解できるところだろう。ただ、一歩間違えば接触その他のアクシデントが起きかねないレベルの低速走行であり、メルセデスブランドに傷を付けかねない事態を招いてしまったことは、今後のチーム内におけるハミルトンの立場を危うくしかねない。

引退レースをリタイヤで終えたジェンソン・バトン

2018年に復帰の権利行使の可能性を有するバトンであるが、木曜記者会見で「このレースが僕の最後のレースになる」と明言。自身がワールドチャンピオンに輝いた2009年のデザインのヘルメットを被り挑んだこのアブダビGP決勝レースが事実上の引退レースであったが、13周目にサスペンションが折れるアクシデントに見舞われリタイヤ。305戦という歴代3位のF1出走記録を残しF1サーカスから身を引くことになった。

引退レースをリタイヤで終えることになったジェンソン・バトン
©@F1

BAR時代には一部から「プレイボーイドライバー」と揶揄されることすらあったバトンが、ワールドチャンピオンを獲得し、歴代3位の出走記録を叩き出すまでにこの世界の一線でレースを続けられたのは、彼に才能があったからに他ならない。苦く苦しいホンダワークス時代には、常に最下位を走ることを余儀なくされながらもひたすらに耐えしのぎ、ホンダ撤退後ロス・ブラウンに買収され誕生したブラウンGP時代、訪れた千載一遇のチャンスを彼は決して逃さなかった。我々日本人が美徳とする心と精神の有り様をこのイケメン英国人に感じるのは私だけではないだろう。

レース巧者と称され、コンディションを巧みに嗅ぎ分けるジェントルな彼の走りを見ることができなくなるのは本当に寂しい。しかしリタイヤ直後のジェンソンは言う「自分が成し遂げてきたことに満足してるよ。今夜はお楽しみがいっぱいあるんだよね~(リタイヤしちゃってもうやることがないから)先に始めることにするよ!」「ぼくは世界で一番幸せな男さ!」彼の目には、いまその時の不運でも、過去の栄光でもない、輝かしい明日のみが映っている。

abudhabi-final-digest-2016-06
©@F1

入賞でさよならフェリペ・マッサ

F1界の愛すべきブラジリアン、フェリペ・マッサ。ジェンソンと同じくアブダビGPがラストレースとなったフェリペ・マッサは9位入賞でそのキャリアに幕を閉じた。F1出走回数250戦総獲得ポイント1122、わずか1ポイント差でワールドチャンピオンを手にすることのできなかった男は、F1最後のレースを終えた今、一体何を思うのだろうか。

引退レースを終えチームメイトのバルテリ・ボッタスと記念撮影するフェリペ・マッサ
©@ValtteriBottas

2009年のあの忌まわしい事故がなかったら。。本人は否定するが、あれ以降マッサのパフォーマンスは確実に落ちていた。先行するバリチェロの車から脱落したスプリングがマッサの顔面にヒット。強靭なヘルメットを突き抜ける形で頭蓋骨骨折という重傷を負ったあの事故のことだ。元ブリジストンのタイヤエンジニアである浜島氏によれば、「時に手がつけられないほどに速かったマッサの実力は、フェラーリ時代のチームメイトである7度の世界王者ミハエル・シューマッハの機嫌を損ねさせるに十分」だったという。

2002年に20歳312日という若さでF1デビューしてから早14年。彼もまた、F1という世界最高峰のモータースポーツレースから身を退く。

ウィリアムズチームから祝福されるフェリペ・マッサ
©@C4F1

ついに掴んだWCの栄光

33人目、そしてドイツ人としては3人目のワールドチャンピオンに輝いたニコ・ロズベルグ。表彰台インタビューが終了したその後にフジテレビF1解説者の川井氏は言った。「どうしてハミルトンのあの走り(執拗に低速で走り自身を危機に陥れたこと)について(インタビューのときに)何も言わなかったんでしょうね?」2年連続ハミルトンに破れ手に入れることのできなかったワールドチャンピオンの称号を、歯を食いしばり血反吐を吐きながらようやくの想いで手に入れた今、どうしてそんな小さなことを気にするだろうか?彼はワールドチャンピオンを勝ち取ったのだ。

インタビューアーのデイビッド・クルサードに質問に対し、焦点がぼやけたような目で応えるロズベルグの表情はとても印象的だった。普段ポーカーフェイスを装い「(ルイスとニコを比べて)どちらかと言えばニコの方が何を考えているのかよくわからない」とメルセデスのマネージング・ディレクターであるトト・ウォルフに言わしめるこのクールなドイツ人ドライバーは、この喜びをどう表現して良いのか分からないような、そんな少し戸惑ったような複雑な表情をしていた。

タイトルを獲得しドーナツターンを決めるニコ・ロズベルグ
©@F1

チェッカーフラッグを受けた後、ホームストレートでドーナツターンを披露し喜びを表したロズベルグだが、事前にちゃんとチームに許可を取っていた。「ねえ、ドーナツターンしてもいい?いいよね?」これがハミルトンだったら許可など取っただろうか?人というものは感情が高ぶった時にこそ、本性が見え隠れするものである。

胴上げで祝福されるニコ・ロズベルグ
©@MercedesAMGF1

完膚なきまでにチームメイトの中嶋一貴に打ち勝ったウィリアムズ時代。惨敗するだろう、と多くのジャーナリストに言われながらもF1復帰したチームメイトのシューマッハに打ち勝ったメルセデス時代。ハミルトンのようなカリスマ性があるわけではなく、時に「育ちが良いから」とお坊ちゃま扱いされ続けてきたニコ・ロズベルグはついに世界で最も速いドライバーとなった。

倒すべき敵がいると人は強くなる。背中を追うからこそ成長できる種類の人がいる。ロズベルグの前にはもう誰の背中も見えない。果たしてニコはどういう種類の人間だろうか?レギュレーションが大幅に変わり、メルセデス無双と称されるような圧倒的強さを誇れるかどうか分からない新時代が到来する。彼はより高みを見据えることができるだろうか?それとも目標と情熱を失い「やっぱり育ちが良いんだよ」と揶揄されるのだろうか?

おめでとうニコ。そして心から来年のあなたに期待している。あなたは世界で一番速い男だ。

F1のボスであるバーニー・エクレストンと抱き合うニコ・ロズベルグ
©@F1 バーニー・エクレストンと抱き合うニコ・ロズベルグ

チームクルーと喜びを分かち合うニコ・ロズベルグ
©@MercedesAMGF1

父ケケと抱き合うロズベルグ
©@MercedesAMGF1 「緊張させてしまうから」と見に来ないと言っていた父ケケだが、当然隠れて息子のレースを見ていた

決勝順位とタイム

各ドライバー毎の順位とラップタイムは以下の通り。

Pos No Driver Team Laps Time Pts
1 44 ルイス・ハミルトン メルセデス 55 1:38:04.013 25
2 6 ニコ・ロズベルグ メルセデス 55 +0.439 18
3 5 セバスチャン・ベッテル フェラーリ 55 +0.843 15
4 33 マックス・フェルスタッペン レッドブル・タグホイヤー 55 +1.685 12
5 3 ダニエル・リカルド レッドブル・タグホイヤー 55 +5.315 10
6 7 キミ・ライコネン フェラーリ 55 +18.816 8
7 27 ニコ・ヒュルケンベルグ フォースインディア・メルセデス 55 +50.114 6
8 11 セルジオ・ペレス フォースインディア・メルセデス 55 +58.776 4
9 19 フェリペ・マッサ ウィリアムズ・メルセデス 55 +59.436 2
10 14 フェルナンド・アロンソ マクラーレン・ホンダ 55 +59.896 1
11 8 ロマン・グロージャン ハース・フェラーリ 55 +76.777 0
12 21 エステバン・グティエレス ハース・フェラーリ 55 +95.113 0
13 31 エステバン・オコン マノー・メルセデス 54 +1 lap 0
14 94 パスカル・ウェーレイン マノー・メルセデス 54 +1 lap 0
15 9 マーカス・エリクソン ザウバー・フェラーリ 54 +1 lap 0
16 12 フェリペ・ナスル ザウバー・フェラーリ 54 +1 lap 0
17 30 ジョリオン・パーマー ルノー 54 +1 lap 0
NC 55 カルロス・サインツ トロロッソ・フェラーリ 41 DNF 0
NC 26 ダニール・クビアト トロロッソ・フェラーリ 14 DNF 0
NC 22 ジェンソン・バトン マクラーレン・ホンダ 12 DNF 0
NC 77 バルテリ・ボッタス ウィリアムズ・メルセデス 6 DNF 0
NC 20 ケビン・マグヌッセン ルノー 5 DNF 0

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